本棚 : 「シンパサイザー」ヴィエト・タン・ウェン 著 ★★★ 早川書房
投稿者: hangontan 投稿日時: 2024-4-24 16:47:14 (2 ヒット)

二重スパイをほのめかす主人公の語りから始まる。ベトナム戦争最中のスリリングな諜報劇を予想させたが、そんな単純なものではなかった。作者が第一義としたことはベトナム人が描くベトナム戦争で、おそらく自分を含めて世界中がこのことについて最も興味のある部位であろう。その点からみると、本作品は作者の意図した通りに描かれており、読み手も十分に納得できる内容となっている。ここでのスパイとしての主人公はベトナム戦争の表現手段である。物語の語り手としてだけでなく、ベトナム人の存在証明を世間に知らしめる役割も与えられている。そういう意味でピュリッツァー賞を獲ったのは十分納得できることである。

印刷用ページ このニュースを友達に送る