本棚 : 「波のうえの魔術師」
投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-10 6:13:59 (398 ヒット)

石田衣良 著 ★★★ 文藝春秋

『波のうえ』とは何のことかと手にとってみれば、株の相場のことだった。なるほど。だが、作品としては波は無く、最初から最後まで小気味のいいテンポで書かれている。取り立てて仕掛けも無いが、予定調和もない。
大学を出たものの職にありつけず、パチンコで日々の生活をしのいでいた主人公に、ある日突然ジジイから声が掛かる。自分のもとで仕事をやってみないかと。そのジジイが株の達人だった。仕事とは、とある銀行の株価を毎日ノートに書き付けることと、新聞をすみからすみまで読むこと。株価の羅列から、青年は株の波を感じ始める。株価と世の中の動き、経済のダイナミズムをジジイは青年に教え込んでいく。青年はそれに応え、最初の取引で勝利を掴む。
登場人物の設定と全体に漂う哀愁感、なんとなく浅田次郎を彷彿させる。
株というものは、購入した値段よりも高く売って利益を得るものだと思っていたが、下がっても儲かる仕組みがあることを初めて知った。

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