本棚 : 「検屍官」
投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-11 6:24:41 (381 ヒット)

パトリシア・コーンウエル 著 ★★ 講談社文庫

1990年、米国でエドガー・アラン・ポー新人賞を受賞。直後に邦訳され、たちまちベストセラーに。女性検屍局長ケイ・スカーペッタが連続殺人事件に挑む。綿密な科学捜査、DNA鑑定、コンピューターハッキングなど、斬新なモチーフがてんこ盛りだが、話の筋はきわめてオーソドックス。しまいにはとんでもないところから犯人が出てきて、これにはがっかり。DNA鑑定も当時としては最先端の技術であったらしいのだが、結果が出るまでに2、3週間もかかっていた。しかも鑑定結果は犯人識別に対して今ほど決定的な基準とはなっていなかった。コンピューターハッキングにしても、当時と今とでは覚醒の感がある。人間をさほど描いたものではなく、こういった最新技術の導入によって大部分が構成される推理小説にはこのようなマイナス面が否めない(最初に読んだときは、なるほど、なるほどと感心しながら読んでいた)。今読んでおもしろくても、10年後、20年後、果たして鑑賞に値するか。この作品はそんなことを再認識させてくれた一冊だ。

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