本棚 : 「シングル&シングル」
投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-12 6:08:25 (390 ヒット)

ジョン・ル・カレ 著 ★★★ 集英社

「訳者あとがき」にもあるように、この人の作品は読みづらい。何でか?唐突な場面展開にとまどい、交わされるセリフの一つ一つにとまどってしまう。一見何の意味も無い、あるいは場違いのように思えてしまい、考え込んでしまう。何か裏があるのではと、想像力を最大限に働かせて読み進む。一から十まで物語りは描かれていない。いったいここに書かれた事件の真相はなんだったのか、把握できない。それは想像と創造の世界の極みといっても過言ではない。あえて部分部分を伏せて抜かれて書かれた物語、そんな風にも思えてしまう。おそらく作者は推敲に推敲を重ねて物語を完成させたのだろう。ときには部分を削り、ときには順番を入れ替え、ときには意味もなさそうなシーンを付け足したりしながら。作者の創造力と読み手の想像力、それをうまくシンクロさせないとこの作品は本当に読みづらい。

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