本棚 : 「12番目のカード」 
投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-12 6:09:42 (381 ヒット)

ジェフリー・ディーヴァー 著 ★★★ 文藝春秋 

リンカーン・ライム シリーズ。図書館から借りてきたこの本はあちこちに傷みが見られる。それは多くの人の手に渡って来たことを物語る。表紙カバーの端は擦り切れ、背表紙からページが剥がされ、分厚い本の途中でパッカリと割れている。ある意味、これほどまでに読みこまれてきたこの本は幸せ者だ。『ボーン・コレクター』以来、リンカーン・ライムシリーズは人気が高い。図書館での順番待ちも毎回のこと。その期待にたがわず、今回も読み応えのある作品に仕上がっている。単なる謎解きに収まらず、解放奴隷という歴史的背景への知的好奇心も満たしてくれる。けなげで、聡明、実直に生きる一人の少女の存在が作品全体をいい雰囲気に仕上げている。アメリアやリンカーンは本書ではほんの脇役に過ぎない。140年前の事件と一人の少女をめぐる事件が綾なすサスペンス。そして最後にはほろりと涙をさそう幕引き。おもしろさてんこ盛りだ。

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