本棚 : 「闇よ、わが手を取りたまえ」
投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-12 6:14:48 (311 ヒット)

デニス・ルヘイン 著 ★★★★★ 角川文庫

古書店で何気なく手に取った一冊。それが予想だにしなかった面白さ。だから本読みはやめられない。
出だしはやや戸惑う。話の展開についていけない。なんで?30ページくらい進んだところで、最初から読み返す。やっぱりなんか変。しかたなく、巻末の解説に目を通す。やっぱりか、本著は前作に関連したシリーズ物だった。たいがいこの種のシリーズものでは、導入部やところどころに前作品のフラッシュバックを入れて、前作を読んでいない者にも登場人物にたいして違和感無く入っていけるような配慮がしてあるが、この本ではそれが極めて少ない。だから、前作を読んでいないものにとっては、出だしにとっつきにくさを感じさせる。だがしかし、全体を通して繰り出される洗練された小気味のいい文章、ウイット感あふれる会話に引き込まれてしまう。多くは語らないが、その文間から読み取る楽しさ、それが詰まっている。事件の展開そのものもサスペンスに富んでいるが、登場人物の心模様にもわくわくさせられる。現代が生んだ大人の小説のひとつの形がみえる。

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