本棚 : 「ネクスト」
投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-12 6:18:27 (350 ヒット)

マイケル・クラントン 著 ★★ 早川書房

出だしはスリリングな展開で、これから何が始まるのかと期待を持たせたが、それは次第にトーンダウンしていった。また、いくつかのエピソードがランダムに出現し、描かれては消え、描かれては消えていく。それはそれで中盤から意味をなしていくのだが、戸惑いが少なからずある。
物語の手法は「恐怖の存在」に似ている。恐怖の存在では、地球温暖化の真偽を双方の立場に立つ登場人物を使ってミステリータッチに描いている。本書では、遺伝子組み換えというテーマを、やはり相対立する進歩派と慎重派の登場人物が物語の進行役となる。訳者あとがきにも触れてあるが、エピソードのランダムな出現とそれがいつの間にか綾なしていく様は、遺伝子の相互作用や、複雑に織り込まれているDNAを象徴しているようにも思える。作者はそれを意図したことには間違いがないと思える。そうでなければ、こんな実験的なストリー展開にはならなかったであろう。だが、遺伝子操作の最新事情を伝え、その問題点をうまく物語化している割には、ストーリの深みに今一欠けるところが伺える。誰か別のストリーテラーと共著となったなら、もっとゾクゾクワクワクするような物語になったような気がする。

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