本棚 : 「ローマ人の物語  ユリウス・カエサル 『ルビコン以前』」
投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-2 5:48:01 (429 ヒット)

塩野七生 著 ★★★ 新潮社

『ルビコン以前』と副題にうたってあるように、ちょうどシーザーがルビコン川を渡ったところで終わっている。まだまだ続く本シリーズであるが、ドラマの一つのクライマックスを迎えている。シーザーは前巻より登場しているが、本書ではまるまる全部シーザーについて書かれている。そして物語は次巻へと引き継がれる。ローマ時代のシーザーとは知らないものがないくらい有名だが、恥ずかしながら小生、彼が何をしたかについてはほとんど覚えが無い。本巻の圧巻は彼が残した『ガリア戦記』だ。それを詳細に辿った本巻だけでも読み応えは十分にあるが、前三巻を読んでいるとその重みが格段に違う。というよりも前三巻はこの巻のために、シーザーの物語のためにあったといっても過言ではない。著者はこれを書きたいがために長々と三巻にわたる前座を書いたとのではないか思ってしまう。元老院制が一つの統治の形として長い間その役を担ってきたが、いたるところでほころびが出始め、その役割はゆらいできていた。そこに現れたのがシーザーで、それは次の時代の幕開けとなる歴史的必然の予感がする。ガリアを制圧しても、元老院と対立することから国賊となってしまったシーザー、次巻ではどうなっていくのか興味津々。

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