本棚 : 「ローマ人の物語  ユリウス・カエサル 『ルビコン以降』」
投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-2 5:48:39 (410 ヒット)

塩野七生 著 ★★★ 新潮社

カエサルはルビコン川を渡ってローマに入る。元老院派に担がれた格好になったポンペイウスとの決着をつけ、その体制を磐石のものとする。しかし、これからという矢先に暗殺される。そして、カエサルの後継者となるオクタビアヌスの登場。ローマ一千年の歴史の中で最も重要な時期とされる紀元前1世紀の様子が詳細に第検第拘に描かれている。時期は共和制から帝政への移行期。カエサルはもちろん、かのブルータス、アントニウス、ポンペイウス、キケロ、クレオパトラ、オクタビアヌスという大物役者が勢ぞろいする。これがおもしろくないわけがない。次から次と繰り広げられる歴史絵巻にわくわくさせられる。様々なパーツによって成り立っている歴史のおもしろさ、その醍醐味がここにある。

著者は本書の中でこう書いている。
「歴史はときに、突如一人の人物の中に自らを凝縮し、世界はその後、この人の指し示した方向に向かうといったことを好むものである。これらの偉大な個人においては、普遍と特殊、留まるものと動くものとが一人の人格に集約されている。彼らは、国家や宗教や文化や社会危機を、体現する存在なのである。危機にあっては、既成のものと新しいものとが交ざり合って一つになり、偉大な個人の内において頂点に達する。これら偉人たちの存在は、世界史の謎である」ブルクハルト『世界史についての諸考察』より

『歴史的必然性が生んだ一人の人格』歴史のおもしろさはこの一言に尽きると思う。

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