本棚 : 「ウルトラ・ダラー」
投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-13 20:36:16 (436 ヒット)

手嶋龍一 著 ★★ 新潮社

NHK元ワシントン支局長の手嶋氏は特派員としてよくテレビに出ていた。商社など海外勤務となれば、外交のお手伝いから、来訪者の接待、旅行ガイドまで八百万のことをこなさねばならない。それはNHKであっても例外ではないだろう。そうして築かれた人脈こそが彼らにとっての資産となり、会社の財産となる。より精度の高い、的を得た報道はそうした地道な活動から生まれてくる。本書にはそんな筆者の経験がもとになっていると思われる箇所が随所に見受けられる。偽100ドル札に秘められた陰謀と、それを巡って繰り広げられるインテリジェンスの世界。まるで見てきたかのように描かれているのは、さすが報道マンというところ。ただ、話がうまいこと運びすぎるのと、全てにおいて上辺だけというか描写が足りないというか、そのせいか、深く心に入り込んで来ない。話の筋とモチーフは秀逸だと思うのだが、そのへんが気になった。結末にいたっては、なんだこれ?という終り方。本当にもったいない。

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