本棚 : 「日米開戦」
投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-24 18:43:06 (389 ヒット)

トム・クランシー 著 ★★★ 新潮文庫

ジャック・ライアンシリーズ。前作までは版権が文藝春秋であったが、本作品から新潮社に移っている。

「恐怖の総和」でアメリカへのテロを描いて見せたときはそのリアルさと臨場感に圧倒された。それは中東、欧米のテロリストとの戦いであった。我々からは遠い存在であるだけに、余計にそのまま自分に入り込んできた。しかし、今回は日本とアメリカの戦い。バカな日本人実業家が画策した夢物語の発端は証券市場の麻痺。アメリカは深刻な打撃とショックを受けたかのようにみえたのだが、ここに切れのいい愛国者が登場しライアンとともになんなく解決してしまう。軍事面でも自衛隊の優秀さは少しだけ披露されているが、所詮アメリカの敵ではない。やはりアメリカは強いのだ。誰にも負けはしない。クランシーはそう言っているように見える。
読みものとしては面白いのだが、日本人の愚かさが単純すぎてあっけなく負けてしまうのがどうにも気になった。日本人以外の、特に欧米の人々が読んだら痛快なのだろう。あれよ、あれよという間に日本は窮地に追い込まれていく。そして、唯一の頼みの綱の核ミサイルも破壊され、一件落着。誰もがそう思ったであろう。しかし、最後に悲惨な結末が待っていた。そのときそれが物語りに止まらず現実のものとなって、全世界の人々がテレビでその場面を見ることになろうとは誰が想像できたであろうか。

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