本棚 : 「ブラック・ウォーター」
投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-9-8 9:27:03 (416 ヒット)

T・ジェファーソン・パーカー著 ★★★ 早川書房

保安官の妻が自宅のバスルームで撃たれ殺されていた、その夫はすぐそばでやはり撃たれて発見された。夫は一命をとりとめたものの、意識不明の重症を負う。はたして、夫が妻を殺し、自分も死のうと無理心中を図ったのか。それとも他殺なのか。状況証拠は撃たれた保安官が決して無実とはいえないことを示している。だが、事件担当の同僚の女性保安官は彼の無実を信じていた。頼みは、撃たれた保安官が意識を回復し、彼から事件の証言をとること。しかし、その間に、株の取引を巡り保安官にとって不利な背景が浮かび上がってくる。やはり、夫は黒なのか。
事件発生から中盤までの物語は、この先の展開が楽しみな運び。撃たれた保安官の無実をどう勝ち取るのか、そこに焦点が絞られる。しかし、中盤以降、株取引に絡む別の事件が作中に出てきてから、やや散漫になってきた感がある。株取引にまつわるモチーフそれ自体はなかなか興味を惹かれるものなのだが、本事件との融合のしかたに、無理というか安易さが感じられる。
「サイレント・ジョー」「カリフォルニア・ガール」よりも先に出された本ということを考えれば、まだパーカーの世界が確立していなかったのだと、得心した。

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