本棚 : 「ガープの世界 」 ジョン アーヴィング 著 ★★★★★ サンリオ
投稿者: hangontan 投稿日時: 2011-1-16 6:29:51 (454 ヒット)

はっきり言って捉えどころのない作品だ。けど、誰かに「読んでみな」と薦めたくなる本でもある。文芸書としてはエロ小説っぽく、単なるエロ小説にしては挑戦的すぎる内容。村上春樹によれば「反現代であることの現代性」とのこと。訳者あとがきにも触れられているが、この作品をみるかぎり、ジョン アーヴィングは小説に新しい可能性を模索した芸術小説家であろう。

劇中劇というのはよくある設定だが、この作品には小説中小説が出てくる。しかも、一本ではなく数本。その組子となっている小説がまるっきりそのまま載せてあって、それがまた,本作品と同じくらい奇妙な理解しがたい内容。
そして、それらが物語の重要な構成要素となっている。その組子の小説自体それだけでも芸術的すぎる内容なのに、それらと本筋とが混ざり合ってまたまた奇妙な世界を形作っている。そのなんとも表現しがたいバランスがこの作品の特徴の一つでもある。

組子となっている小説について訊かれた掃除婦のおばさんはこう答えている。
「するときみは次がどうなるか知りたくて本を読むわけだね?」
「ほかに本を読む理由なんて、ないのとちがうっけ?」
これこそが作品中小説の著者である本作品の主人公ガープが目論むところであり、本作品の著者ジョン アーヴィングが意図したところではないだろうか。その意味ではこれを読んでいる自分はまさしくその動機付けに誘われて「ガープの世界 」にのめりこんでいっている。新しい可能性を模索した芸術的小説でありながらも、小説の不変的で単純な命題が根底に貫かれている。

エロな場面も多く男性には魅力的な作品だが、世の女性方はどう読むのだろか。

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