本棚 : 「KATANA」服部真澄 著 ★★ 角川書店
投稿者: hangontan 投稿日時: 2011-9-15 17:55:46 (333 ヒット)

「KATANA」とは現代の刀狩、すなわち米国の銃砲規制に与えられた作戦名。年間3万人もの市民が銃の犠牲になっているアメリカ。これはそれだけのテロがあるのと同じことを意味する。武器を持つことは建国以来アメリカの憲法に認められた市民の権利。しかし、銃がなければこれだけの犠牲者を出すこともないと考えるのは平和ボケした日本の田舎物の考える妄想だろうか。なにしろ、自分の身は自分で守らなければならず、またそうする権利があるとするアメリカ。そんなアメリカから銃を一掃することは、夢物語に等しい。しかし、テクノロジーの進歩がそれを可能にした。「命を繋げる銃」の発明である。人を殺すことなくダメージだけを与える銃、しかも銃把には登録人認証システムが組み込まれており、登録人その者のみが発砲可能であり、誰が撃ったのか被害者にはこれも微細な認証マーキングが残されるようになっている。

この「命を繋げる銃」を巡って物語は展開する。登場するのは国際軍事コングロマリット、米国情報機関、テレビ局のリサーチャー。事件の解明役となるのが国際軍事コングロマリットのエージェント崩れの自称“派遣組”の兵藤。体形やちゃめっけたっぷりのキャラクターはヒロ・ナカムラそっくり。そして、キーマンとなるのが記憶をなくしたヴィンス。彼がまた、特殊能力を発揮する。頭に描いたもの、また記憶の底にあるもの、見たもの正確に書き上げてしまう。これがヒーローズのアイザックを彷彿させる。さらに、キーとなる最新テクノロジー「ジオタグ」。これはデジカメで撮った被写体の認証システム。たとえば鳥の写真を撮って、それを検索にかけると、ネット上の鳥図鑑の中からその鳥を選び出し、その鳥の名前がわかるという仕組み。さらに、ウェブ上の同じ鳥の画像を認識しそれを抽出してしまう。何時何処で撮られたのかも一目瞭然。記憶を無くしたヴィンスは、自分の描いた精巧な絵をデジカメで撮って、無くした記憶の断片に迫ろうとする。
テーマや最新テクノロジーの創出はおもしろいと思うのだが、国際軍事コングロマリットや米国情報部が出てくる割には深みやスケール感に乏しい。B級映画やテレビドラマの原作としてならまぁまぁの作品であろう。

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