本棚 : 「伏」 贋作・里見八犬伝 桜庭一樹 著 ★★★ 文芸春秋
投稿者: hangontan 投稿日時: 2012-5-30 21:09:58 (385 ヒット)

「人」偏に「犬」と書いて「伏(ふせ)」と読む。
題名の由来はもちろん「伏姫」からきている。「里見八犬伝」後、江戸時代まで八犬士の末裔(犬人間)が生き延びて、それらは「伏」と呼ばれ、うまく街中にとけこみ、文字通り世の中から伏せて生きている。

本家曲亭馬琴が超長編の南総里見八犬伝をまだ執筆中のおり、その息子“滝沢冥土”が読売となって登場し、父に負けじと「贋作・里見八犬伝」を語る。

その「贋作・里見八犬伝」から飛び出した伏(犬人間)が江戸時代を背景とした本作品に登場し、入れ子になった作品中作品と本作品とで不思議な世界を形作っている。そして、本著自体が「贋作・里見八犬伝」とも言えて、なんともややこしい話。

悪女”船虫”が憎めない役柄を演じているのも、小憎い演出。

著者桜庭一樹得意のマジック・リアリズムが十分堪能できる作品だ。

印刷用ページ このニュースを友達に送る