本棚 : 「私の男」桜庭一樹 著 ★★★★★ 文芸春秋
投稿者: hangontan 投稿日時: 2012-6-6 6:58:34 (311 ヒット)

あいかわらず、登場人物の名づけ方が変だ。
主人公は腐野淳悟とその娘の花。

異常と言わざるを得ない親子関係なのだが、そこにくぎ付けとなり、どっぷりと浸ってしまう。
先の読めない筋立てと、それが醸し出す独特の世界は類まれのものを感じる。

最初に今があって、物語は順に遡っていく。遡るたびに語り手が変わり、それぞれの物語が先の物語を補佐する役目となっている。と同時に、全体の物語の入れ子ともなっている。言わば、この作品も桜庭一樹ワールドに満ちている。

直木賞選考の過程で、委員の北方謙三は「反道徳的、反社会的な部分も問題になったが、非常に濃密な人間の存在感がある」と、述べている。この“濃密な人間の存在感”こそが本作品のキモだと思う。

ドキドキ、ハラハラに加えて今回は生唾もの。
一度読んだら絶対に忘れない、強烈なインパクトのある作品だ。

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