本棚 : 「ワンダフル・ライフ」(バージェス頁岩と生物進化の物語)スティーヴン・ジェイ・グールド 著 ★★★★★ 早川書房
投稿者: hangontan 投稿日時: 2012-8-22 4:51:16 (324 ヒット)

1909年、カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州の東端に位置するカナディアンロッキー、スティーヴン山系の高度2400メートルの斜面に露出しているカンブリア中期(5億5千年前)の頁岩層から動物群の化石が多数見つかった。

1960年代から、その化石群の再評価がなされ、そこに生息していた節足動物は現在の分類群にあてはまらないものが多くあることが判明した。

そこから、著者グールドは進化論についての再考を促す独自の主張を展開する。

すなわち、
『現生生物に見られるパターンは連続的な多様性の増大と進歩向上によってゆっくりと進化したわけではなく、(形態的デザインが最初に急速に多様化した後に起こった)とんでもない悲運多数死によってしつらえられたものなのだ』

それは「偶発性も重視する断続的進化論」であり、それまで一般的に唱えられてきた進化論の主流、「自然淘汰の作用を最大限に重視する漸進的進化論」と相反する。

本書を読む前から常々、生物種の多様性を不思議に思っていた。たとえば、人類の肌の色や、目の色、髪の色の違いは元を辿るとどこに始まるのか、人類の祖先が猿やネズミと同じとはとうてい思えない。元は黄色や、緑の肌の人間もいたのではないか、今よりももっと多種多様な生物がいて、それらの一部が消滅してしまった生き残りが現在ある姿なのではないか、と思ってみたりすることもあった。

本書は、小生がそれまで抱いていたあいまいさともやもやを吹き飛ばしてくれた。これで自分の偏見に自身が持てた。また、発掘の楽しみと喜びを伝え、化石から導き出される進化論の考察の過程が素人にもよくわかるように書かれている。

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