本棚 : 「水滸伝」全19巻 北方謙三 著 ★★★★★ 集英社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2013-4-24 18:42:38 (368 ヒット)

初めて北方謙三の作品を手にとった。
全19巻、最初全部読み切れるかと思ったが、そんな杞憂は読みだしてすぐに吹き飛んだ。
1巻を読めば2巻、2巻を読めば3巻と、次々に物語に引き込まれていく。特に10巻頃から始まる梁山泊と禁軍の将童貫との総力戦は圧巻。時間も忘れての一気読みに突入していった。

敵を倒すための戦略には様々な要素が絡み合う。彼我の軍力の分析、兵の調練と将の配置、諜報と兵站。そういった梁山泊と官軍の読み合いとかけ引きの物語はそれだけでも十分おもしろい。しかし、ここに描かれているのは、まさしくそこに生きた人の物語である。疲弊し腐敗したた国を立て直すため、どんな人が集まり、どんな英傑が登場し、彼らが何を思って戦って、死んでいったか。それより、なんといってもおもしろいのは、小が大に立ち向かうことの痛快さである。数では絶対的に劣る彼らが、その志のもとに一丸となって官に立ち向かう。これほど庶民の心を揺るがす物語はあるまい。

思えば、昔っから中国という国は、同じことの繰り返しではないだろうか。近代に入って、毛沢東のときもしかり、現代に至っても一党独裁のもとでの役人天国。梁山泊の頃と少しも変わっていない。

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