本棚 : 「コレクションズ」ジョナサン・フランゼン 著 ★★★★ 新潮社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2013-5-7 18:29:36 (481 ヒット)

コレクションズとは人生の様々な物語を集めてつなぎ合わせた「集成」のことかと思ったら、そうではなかった。綴りが違った「L」ではなく「R」、すなわち「修正」の意だった。

ジョナサン・フランゼンの二冊目。もっとも、先に読んだ「フリーダム」よりこちらの方が先に書かれている。「フリーダム」を読んだ直後、思わぬところで再びフランゼンの作品に出逢った。この種の奇遇に度々驚かされることがある。人との出合い、本との出会いは不思議なものだ。

作品としてはジョン・アーヴィングと似た雰囲気が感じられ、文学的だが自分には一番ついていけない種類の作風。

「フリーダム」よりは、こちらの方が物語的にはおもしろいように感じた。「フリーダム」は、ややもすると風俗小説ギリギリの感があった。やたら「寝る」「セックス」という言葉が出てくる。頻繁に、どころではない。究極の欲望の物語だった。「コレクションズ」「フリーダム」とも、ストーリー展開を楽しむというよりは、「会話と心情、そして生活の緻密な描写」に引き込まれるという作品だ。「コレクションズ」ではそれももちろん秀逸だが、それにストーリー性も加味されていて、面白みに勝ると感じた。

作品では老夫婦とその二人の息子と娘の生きざまが描かれている。その中でも、パーキンソンと痴呆に病んでいる夫と、その夫に付き添う夫人の物語が重みを増している。やがて自分にも来るかもしれない老いの世界。それを大胆にかつ緻密に描き出している。まざまざと見せつけられる老いの現実。それだけでも迫力十分。そこに三人の子供たちそれぞれの物語が加わり、老夫婦の暮らしとリンクさせ、それでいて全体のバランスもうまくとれている。

2001年に全米図書賞、全米書評家協会賞、ピュリッツアー賞、PEN/フォークナー賞にノミネート。結局、全米図書賞に輝いた。それだけの内容はあると思う作品だ。

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