本棚 : 「楊令伝」全15巻 北方謙三 著 ★★★★★ 集英社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2013-6-12 4:56:35 (362 ヒット)

最終章「蒼穹の章」、その最後の最後は目がしらを熱くせずして読めないだろう。
途中読みながら、水滸伝はこれで一服にしようかと幾度思ったことか。それがこんな終わり方をされたのでは、また次を手にとってしまいたくなった。

「水滸伝」の中で楊令が初めて登場しとき、こんな幼子が戦さに関わるには随分長い話になるのだろうな、まさかね。と思いながら読んでいた。その楊令が梁山泊の総帥となって、宿敵禁軍の将童貫に戦いを挑む。第二次梁山泊、そして第二世代梁山泊の物語である。
童貫との戦いを終えたとき、水滸伝第二部の完となる。ざわざわとした余韻を残したまま、ここで打ち切りにしてもよかったと思うのだが、作者はそうしなかった。

「水滸伝」では腐敗した宋という国への反抗精神に満ちた梁山泊の胸のすく戦いぶりが見ものだった。「楊令伝」では童貫を討った後、梁山泊は第一世代の資産を活かしたまま、さらに発展させ、基盤を盤石のものとし、第二世代のつわものが育ち、中華において最強の軍団となってしまった。はたして、戦のあと梁山泊はどうなるのか、楊令はその後どんな生き方をするのか、そこに興味の的がいく。

楊令は言う「俺は、自由市場が普通の市場であり、物資が豊かに流れる国を作りたい。それはもう、国とは言えんのかもしれん。国が果たすのは、物流の統制。治安、国外からの攻撃に対する防御が中心になる」、と。これはもう現在の国あり方そのものを代弁している。

はたして楊令の国づくりはどんな結末を迎えるのか。それが楽しみでページをめくっていった。

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