本棚 : 「土の中の子供」 中村文則 著 ★★ 新潮社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2013-7-15 16:17:04 (502 ヒット)

自分は高校まで本とはあまり縁がなかった。国語は体育とならんで苦手分野。中学生の頃に読んだ本はSFの「宇宙のスカイラーク」のみだったような。理科や算数は知る楽しみや、解く楽しみがあってそれなりに好きだった。そういう意味では英語も理科や算数の延長線上にあって嫌いではなかった。だが、国語にはそういう要素は全くなく、したがって教科書にも無反応。国語のテストの「正解」に首をかしげた。

しかし、高校からは古文や漢文が入ってきて、そちらには興味を抱いたが、現代国語にはやはりとっつきにくかった。元来へそまがりの自分は、一番苦手なものに挑戦してみようとの思いから、本を読んでみようと、手にとったのが石坂洋次郎の「陽のあたる坂道」だった。どういう理由からその本を選んだのかは覚えていないが、多分題名の格好よさに引かれたのだと思う。以来、理解できぬまま、理解しようとの一心で本読みに入っていった。ただただ読んだ本の冊数だけが高校生活の証となった。それが今にまで高じている。しかし、それと、文学への理解とはまた別の問題。この作品はその自分の苦手な分野の作品なのだろうと思う。

芥川賞をとった作品だが、それほどの作品なのだろうか、と思ってしまう。
作者にとってこれが5作目の小説という。年齢もまだ若い。たしかに、無駄の一切を省いた簡潔な文章は読みやすい。短編ということもあって1時間もあれば読み終えてしまう。心の底の独白というか作者の観念は十分に伝わってくる。だが、そこに芥川賞のインパクトがあるかと問われれば、やはり疑問と言わざるを得ない。読み終えて、2、3日たって、どんな話だったかまったく覚えていない。ただ読んでいるときは、引き込まれて読んでいたことは確かなのだが。そんな印象しか残らない本だった。

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