本棚 : 「史記(武帝記)」 北方謙三 著 ★★★ 角川春樹事務所
投稿者: hangontan 投稿日時: 2013-9-29 4:31:23 (418 ヒット)

司馬遷が記した「史記」を初めて目にしたのは高校の図書室でだった。何をどう読んだのかは全く記憶にないが、図書室の大きな机に向かって、細かな字で書かれた分厚い本に挑んでいたことを覚えている。思えば中国の壮大な歴史物語に興味を抱くようになったのはこれがきっかけだったように思う。
以来、いつか再び「史記」を手に取ってみようと思いながらもなかなかそのときが巡って来なかった。その期間、実に40年。奇しくも、「大水滸伝」から始まった北方謙三の作品繋がりでようやく今読むことになった。

北方謙三の超人気シリーズ「大水滸伝」の出版社は集英社、これでおそらく集英社はかなり稼いだに違いない。出版業界の内幕なぞ知る由もないが、この白熱ぶりを他の出版社が手をこまねいてみているはずもなかろう。当然わが社にもと企画を練っていたに違いない。「大水滸伝」に匹敵するか、それ以上の集客力があると思われる中国の歴史物語といえばやはり「史記」が図抜けている(「三国志」はすでに角川春樹事務所から出されているが、過去のものとなりつつある)。そこに目をつけたのはいかにも角川春樹事務所らしい展開であったような気がする。今回は「史記」の本家著者司馬遷とともに生きた漢の第七代皇帝劉徹(武帝)を描いた「武帝記」となっているが、オリジナルの「史記」は中国の始まりからの歴史が記されており、小説の題材は無限にあるといっても過言でなない。はたして、「北方史記」が「北方大水滸伝」のようになっていくのかどうか、その点が気になるところである。

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