本棚 : 「Gene Mapper(full build)」 藤井大洋 著 ★★★ ヤハカワ文庫
投稿者: hangontan 投稿日時: 2013-10-2 4:20:53 (471 ヒット)

この本は息子の本棚から拝借してきた。
本書は昨年電子書籍個人出版という形で世に出て、たちまちベストセラー、今年になって文庫本化された。
えらい時代が来たもんだと実感する。「電子書籍」が「リアル本」となって、そのことが再びウェブ上で語られる。かくいう小生もググってみて驚いた。自分の知らない世界がここにもまた一つあった、自分の知らないところで世の中は動いているんだと痛感した。それはモヤモヤとしてはっきりとは表現できないのだが、何か新しい事が興っていることを感じさせるのに十分であった。もし息子の本棚を覗かなければ、この本には出逢わなかったであろうし、新しい波に気付かなかったであろう。

さて、内容は。
近未来を描いたSF。しかし、「拡張現実」といい「蒸留植物」といい、想像を超えたSFの世界というより、今ある最先端のバイオテクノロジー、コンピューターテクノロジーのイノベーションにより、もしかしたらそういう世界がくるかもしれないという、手に届きそうなテクノロジーを駆使したSFといえる。
最初はそのテクノロジーの世界に入り込むのに苦労した。これが、若い世代なら、マニュアルなしでIT家電を操られるように、すんなりと小説の中に入っていけるのだろう。中盤を過ぎたあたりから、なんとなくその世界に慣れてきて、ストーリーに集中することができた。
作者は「ハイスピード・ノベル」と呼んでいるが、「電子書籍」の読者にはまったりとした文章表現が好まれない傾向にあることを意識して、きびきびとしたストーリー展開を試みたのだろう。ノンストップサスペンスを意識して、それとは違う趣でということなのだろうか。

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