本棚 : 「ゼロと呼ばれた男」鳴海章 著 ★★★ 集英社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2014-2-14 17:57:40 (453 ヒット)

鳴海章、二冊目。最初に読んだ「薩摩組幕末秘録」ですっかり鳴海章に魅了されてしまった。そして、手にとった本書。

一時期評判となった「ゼロ・シリーズ」の第一作目ということらしい。鳴海章としては初期のころの作品。

航空冒険小説と呼ばれるだけあって、戦闘機同士のドッグ・ファイトの描写が秀逸。手に汗握る緊張感と臨場感。多くの人々に支持されたわけが良く分かる。もちろん航空自衛隊の飛行機乗りが主人公。

「薩摩組幕末秘録」でもそうであったが、鳴海章の書き方には癖がある。いきなり場面が変わり、その場面の説明がそれに続く。物語が時間軸で動いているとしたら、その時間軸のある一点に突然漂着し、その点に膨らみを持たせて、時間軸の線を構成させていく。そして、それが前後重なり合うようにして全体の物語が形作られ、読む側にもそれが見えてくる。このやり方は別に鳴海章に限ったことではないが、彼の場合、場面の切り替えが非常に多い。それが、時間軸上のどこに位置するか、一瞬考えさせられることもあるが、それもまた想像を掻き立たせてくれる要素となっている。

今でこそその存在が当たり前のこととなったステルス戦闘機、その導入秘話をモチーフに取り込んで、ミステリータッチに仕上げられている。

印刷用ページ このニュースを友達に送る