眉村卓 著 ★ 運命新人物往来社
歴史SF。845Pは分厚い本である。
タイムマシンものにしては、ややSF度が足りない。というかソフトSFという感じ。それでも、これを読めばカルタゴとハンニバルのことは勉強になる。
船戸与一 著 ★ 新潮社
横浜、光州、台中が舞台の野球小説。野球賭博がらみの殺人事件から始まる。プロ野球の裏側を韓国、台湾のもつ歴史的背景を交えながら描いている。選手たちの生き様の話だけでも十分楽しめる。殺人事件を絡ませないやり方もあったのではないかと思う。
帚木 蓬生 著 ★ 集英社
最先端生殖医学ミステリー。出だしでこれは悪魔の本かと期待を抱かせたが、いつのまにやらそうではなくなっていた。入院しているときなどの暇な時間に読むにはちょうどよい。
平谷美樹 著 ★★ 角川春樹事務所
超能力者達が自らの安息の地を求めて旅立つ話。昔エスパー、今サイキック。ネットがうまく利用されているのも現代風。ただ登場人物が多すぎるのが気になる。
高村薫 著 ★★★ 新潮ミステリー倶楽部
さすがというか、読みごたえがある。
「リヴィエラ」の正体を巡って繰り広げられる深く重い流れ。IRAに係わる主人公にのめり込んでしまった。日本人なのにどうしてこんなに国際的な顛末をリアルに語れるのだろうか。
どうせこの手の本は通り一遍の上辺だけのことを書いているんだろうと思っていたが、読み始めてすぐその考えは改めさせられることになった。本書は作者の『アウトロー烈伝』シリーズの中の一冊なのだが、売薬(この呼び方を嫌う業者さんもあるようだが、筆者は敬愛をこめてそう称している)をそのアウトローとして捉えている。いわく「自由は固定されない、移動こそが原理だ」「エンターテイメント即アウトローイズムなのだ」そういう意味では、我々売薬はまさしく自由と旅を享受して商売をしているといえる。「旅行というのと旅というのとは、まったく違うことと考えていただきたい。土地の人と話し合いをし、土地の人と遊び、あるいは助け合ってくるような感じをつくって行くのが、旅なんですね」これこそ我々売薬が歩んできた道だし、これからも永遠と続いていく道筋であろう。圧巻は巻末に記された膨大な参考文献の数々。この本はそこから絞り出されたエキスのようなもの。読み物としても芯が通っているし、資料として読んでもわかり易い。至玉の一冊といっても過言ではないだろう。