トピック&お知らせ : Qプラン 〜「先用後利の行く先は」〜その2
投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-4-26 18:28:06 (761 ヒット)

今何をすべきか
「先用後利の行く先は」と題して問題点の洗い出しを行ったのが数年前。そのときの課題は山積みのまま。この数年間で状況はますます厳しくなってきた。先輩方から受け継いだ帳面は細っていくばかり。旧帳面、旧懸場は瓦解の危機に瀕している。他でも似たような話はよく聞く。マイナス面ばかりが大きくのしかかり、これといった妙案が見出せないでいる。業界全体の士気は上がらない。以前のような繁栄はもう望めないだろうが、このままでは出向型売薬は限界産業となってしまう。何をどうすればいいのだろうか。これまでにもあちこちで言ってきたことを、ここにまとめてみた。

一番大事なのは生き残るための戦略と具体的な戦術をたて、それに沿って実行していくこと。過去幾度となく施されてきた手当ては場当たり的の感がぬぐえなくもない。それはそれでその時々で有効な手段であったかもしれないが、どこに行き着くかという明確な指針がなかったような気がする。崖崩れ的な危機状態にある今こそ、将来展望を見据えた業界全体での取り組みが必要。新制度後は配置VS店舗、現地業者VS富山の業者の構図が加速される。地域密着型がより重視されるだろう。出向型の我々としてはとても厳しい状況下に置かれる。

一方、海外では「置き薬」が脚光を浴びている。モンゴルでの導入が口火を切った。当初、モンゴルの「置き薬」プロジェクトは短期で終える予定であった。しかし、ふたを開けてみると、その有用性、有効性が数字として現れるに至って、支持援助母体である日本財団は支援の延長を決めた。なによりモンゴル遊牧民の絶大なる支持を得たことが数字以上のものを物語っている。住民の健康を守り、医師側の負担軽減、国の医療費削減にもつながる富山の配置薬システムの有効性がモンゴルで証明された。ここに我々が学ぶべき点、現状を打破するヒントが隠されていないだろうか。「置き薬」は昨年のWHOでの報告以降、発展途上国からの引合いが絶えないという。その手始めとして、本年からはタイでも「置き薬」プロジェクトが開始される。300年以上も続いてきた「富山のくすり」は時代の要請に応えて、思わぬ方向に動き出そうとしている。「モッタイナイ」がアフリカから全世界に広っていったように「オキグスリ」が世界中で注目される日も近い。

1.富山の薬屋生き残り戦術
問題が多すぎてどこから手を付けていいのかわからない。そこで、最優先課題を3つに絞る。それらの解決策を練ることで、停滞からの突破口を見出す。プランの骨子は個人でやるべきことと、全体で行うべきこと。その両輪をうまくミックスさせ、相乗効果で荒波を乗り切っていく。

1.解決すべき課題と大まかな指針
解決しなければならない問題はいくつもあるが、集約すると以下の3点に絞られる。
「売上高の減少」
「懸場の衰退」
「配置従事者の減少」
これらは昔から指摘されていて今に始まったことではない。しかし、この十年来これらの問題点は急速に悪化し、個人業者の死活問題となり、また富山のくすり全体を脅かす根源となりつつある。今早急に手を打たなければ、300年以上続いた伝統も行く先が危うい。

2.振興プラン作成
では、どう克服していくのか。個人でできること、やるべきことを足元から固めていくことは言うまでもない。加えて、全体でカバーし、推し進めていくことを練り上げていかなければならない。言い換えるならば、明確な指針を示し、それに沿った具体的な戦略、戦術をたて、実行していく必要がある。これまで、多くの会議、フォーラム等でそのヒントは出され、単発的な手立ては講じられてはいる。しかし、なかなか結果として現れてきていない。中・長期にわたり体系化された戦略作りが今必要である。

3.振興プランの柱と補足する概念
「富山のくすり」を商店街にたとえるならば、現状は商店街に人が来なくなってきて、個々のお店の売り上げは減るばかり。商店の後継者もなく、シャッターが降りている店もある。といったところではないだろうか。「あの街ね、昔はずいぶん賑わっていたんだけれど」「しばらく行ったことがないなー」こういう商店街に再び人を引きつけ、もう一度活気を取り戻すためには商店街をあげての取り組みが必要である。富山のくすりにも同様のことが言える。もう一度富山のくすりを使用してもらうため、失われつつある富山のくすりへの信頼と信用を取り戻す戦略が必要。看板を塗り直しただけでは人はやってこない。中身も一緒に変わらなくてはいけない。そのための重要なポイントは富山のくすりとしてのイメージと現実の差を埋めること。そのための手段を考える。また、それらを後押しするため、消費者にセルフメディケーションの認識を強く促し、セルフメディケーションと富山のくすりの方向性の一致もまた認識してもらう施策を打つ。こちら側からの一方的な押し付けにならないようにするため、消費者側からの視点も常に配慮することも忘れてはならない。

4.取り掛かりとなるキーワード
 崘箴綛發慮詐」=「販売不振払拭」のための手立て
富山のくすりの新ブランド化とそれに伴う本体(実態)の構築
消費者の年齢層に分けたアプローチ手法の再考をメインとした戦術をとる

高齢者とその予備軍に対して
「配置薬=症状薬」の固定したイメージの打破
品揃えの拡大よりも時代に対応した新しい核となる配置新薬の投入 → パナワン

若い世代と新規顧客に対して
配置薬の認識の強化
赤玉・熊・胃薬・鎮痛剤などリピート薬を使用してもらうための手法、しかけ
家族における次世代獲得につながる対策
イメージの植え付け ラジオ → テレビ宣伝、くすりフェアなど

懸場の保全とマーケットの拡張
振興センターは有効に活用されているか?
活性化のネックとなっているのは何か?
マーケットの拡張をどのようにして図っていくか。既存の懸場の継承だけでは近い将来衰退してしまう。継続的な懸場拡張の必要性がある
若手個人業者の新懸けをどう支援するか

ITの有効活用
ITの有効活用について真剣に論ぜられたことがあるか?
ITをどう役立てるか。会員同士の意思疎通、情報交換だけでなく対顧客に利用できないか?顧客の囲い込みと潜在顧客へのアプローチを兼ねたホームページは必須と思われる。ホームページの可能性についてもっと研究されるべき

2.登録販売者制度後にくる姿 地域密着型と出向型との競争
登録販売者制度が施行されるに至って、富山の薬屋に突きつけられた新たなる課題。これも重要なポイントだ。だが妙案が見当たらない。

1.加速される動き
・地域密着型サービスがより重要となる
・店舗間競争(大型同士、大型と小型)+ 配置業との競争が進む
御用聞き型商売、電話一本ですぐ配達など
  きめ細やかなサービスで顧客に対応
・大型家電店やホームセンターなどにも薬が置かれるようになり、消費者の利便性が大きく向上。医薬品市場はネット販売も絡めて一時スクランブルエッグ状態となる。いずれその状態は落ち着いて行くのだろうが、その混沌に配置は耐えられるのだろうか。とりわけ個人業者、出向型にとってはイバラの道となる。

2.配置業者はどうなる
・残された配置の少ないパイをめぐって、現地業者と出向型業者との競争が加速され、これまで以上に激しくなる
・現地配置業者は地域密着型の流れに対応可能。対店舗用にとっているサービスが出向型業者への優位性につながる。そこで生まれた新しい輪、新常識から出向業者は外に置かれる。
・出向型業者のパイは益々小さくなる。
3.出向型「富山の薬屋」はどうすべき
・地域密着性を求めようとしても無理
・現地業者、店舗との違いを見出さなければならない
・独自色を強めなければならない(これまで以上に)
・付加価値を強める方向で差別化しなければならない。ただ単に「富山の薬」というキャッチフレーズだけではいけない。「富山のくすり」の商標が認定され、ロゴも一新された。ではその実態はどうなのか。中身が変わらなければどうしようもない。

3.モンゴルに学ぶ 古くて新しい配置薬の姿 置き薬が国民のQOLを高める
プロジェクト発足から5年経過したモンゴルでの置き薬事業は大成功を収めている。その成功の実態を精査することで我国での置き薬低迷の流れを変えられるかもしれない。
置き薬が遊牧民のQOLを高めているという事実。そこに打開策の鍵があると思われる。
我国で300年以上も続いてきた置き薬が、国民の保健衛生に寄与してきたことは紛れも無い事実である。同時にQOLもそれとはあまり意識せられることなく高めるのに役立ってきたのではないだろうか。そこら辺を今一度検証して、それがデータ的に裏打ちされたなら、国民の置き薬への価値観にも変化が生まれるのではないだろうか。すなわち、「富山のくすり」というイメージだけが残り、実態はあまり関心が無いという現状が変わっていくかもしれない。 「富山のくすり」が国民のQOLを高めてくれるのならば、潜在的顧客や若者達の間の中にも積極的に配置システムを生活の一部に取り込んで行こうという気運が高まっていくのではないだろうか。
モンゴルでの配置薬プロジェクトについてまとめてみた。
(引用元:NGOワンセンブルウ・モンゴリアHP、日本財団HP)

1.なぜ今モンゴルで置き薬なのか
モンゴルでは古い歴史を持つ伝統医療が1930年代以降の社会主義時代は禁止された。体制が変わった1990年代になり復活したが、予算不足のため地方、特に遊牧民にまで普及することはなかった。伝統医療を活用した医療サービスの向上 の一環として富山方式の置き薬が取り入れられた。
2.その目的は
.皀鵐乾觜颪寮祥琉緡鼎紡个垢訛綢悄κ箚旭緡鼎箸靴討離皀鵐乾訶租医療の社会的普及
⊇縞な医療サービスを受けられない地方住民や高価な西洋医療に手が届かない貧困層への廉価で効果的な医療サービス体制の確立
3. 期待された効果
通常の地方病院では伝統医療による治療を受けられない住民たちのニーズに応える。
モンゴル伝統医薬品を使用した置き薬配置活動により、西洋医薬品に対し安価で持続可能な医療サービスシステムを構築する。
健康維持のために常備薬を事前に購入しなければならないという住民の経済的負担が軽減される。
代金回収及び医薬品補充のために医師が各世帯を訪問した際には置き薬医薬品に関する相談や健康相談も受けることができる

4.モンゴルでの置き薬 その実情
モンゴル伝統医療普及プロジェクト
医療サービスに充分なアクセスのできない地方住民を対象に、同国政府保健省で認定されている伝統医療を活用した医療サービスの向上のための活動
 事業内容
   (1) 伝統医療に関する医師研修
   (2) 伝統医療医師による地方巡回診療
   (3) 伝統医薬品の置き薬配置活動
 事業目的
   (1)モンゴル国の西洋医療に対する代替・補完医療としてのモンゴル伝統医療の社会的普及
   (2)充分な医療サービスを受けられない地方住民や高価な西洋医療に手が届かない貧困層への廉価で効果的な医療サービス体制の確立
   (3)モンゴル政府が本事業をモデルとして全国に普及できるような「社会装置」としてのモデル事業づくり

実施機関 ワンセンブルウ・モンゴリア(モンゴル政府登録 NGO )

支援母体
日本財団が資金の100%を拠出
2004年度 \49,850,000
2005年度 \49,660,000
2006年度 \79,300,000

実施内容
配置薬の内容
胃腸薬や解熱剤など12種類のモンゴル伝統医薬品と体温計・包帯・脱脂綿等で計8米ドル程度の販売価格の置き薬キット を配置。含まれている医薬品はその効能と処方についてすべてモンゴル国保健省から正式に認可を受けているもので、特に地方住民に必要な医薬品を選定。

配置件数
2004年度にモンゴル全国21県のうちの3県4郡の地方住民2千世帯(約1万人)に各世帯1キットずつの置き薬を配置した。そして2005年度に合計5県15郡約1万世帯(約5万人)まで拡大。

実施方法
春秋1回ずつ地方医師による代金回収及び医薬品補充

訪問率       84.2%     9,611世帯のうち8,091世帯 (2006年4月・5月)
世帯別使用率    80.0%     6,471世帯
世帯別代金回収率  82.6%     5,342世帯
金額別代金回収率  81.2%     総使用額に対して81.2%の金額

置き薬の医薬品の使いやすさ、薬効について
2004年度に配置した2000世帯を対象に実施した2005年度の調査で、有効回答1,515世帯のうち1,121世帯(74.0%)が置き薬は使いやすいと回答し、1,113世帯(73.5%)で効き目があると回答があり、住民から高い評価を受けている
配置のあった郡病院での住民への往診回数減少
   事業実施前  2003年度  往診件数合計 2,261件
   実施後    2005年度          1,723件(23.8%減)

往診件数の減少は医師業務に対する過重な負担軽減や諸経費の節減にも繋がることとなり、本プロジェクトを実施したことにより地方での医療サービス環境に顕著な変化をもたらす結果となっている 。

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