トピック&お知らせ : 富山配置薬の国際展開と今後のためのシンポジウム 2010.6.5
投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-11 20:33:34 (740 ヒット)

富山配置薬の国際展開と今後のためのシンポジウム

モンゴル医師研修団及びタイ保健省行政官が、富山県を中心に配置薬システムの研修を行うことに合わせ富山市で開催された。WHOからは伝統医療責任者も参加。富山配置薬システムが、モンゴルおよびアセアン諸国で活用され始め、これらの各国の現状と今後の発展に関して、広く関係者に理解して頂き今後の活用を討議するためである。

モンゴル、タイ、ミャンマーにおける配置薬プログラムについての報告が、各国代表よりなされた。2004年モンゴルで試験的に実施された配置薬事業は、世界銀行からのローンを受けることを視野に入れ、今や国家的プロジェクトになりつつある。それは国民からの支持を集めていることの証左だ。実際、成果も上がっている。昨年度のデータでは、医師の往診の回数が事業を始める前とでは2割減ったということである。公衆衛生の向上とプライマリケアの充実による、より重篤な疾病の予防を目的としている。そのために選ばれたのが近代的な西洋医学ではなく、モンゴル固有の伝統的な医療の普及であった。その三つの柱として、.皀鵐乾觜颪寮祥琉緡鼎紡个垢訛綢悄κ箚旭緡鼎箸靴討離皀鵐乾訶租医療の社会的普及⊇縞な医療サービスを受けられない地方住民や高価な西洋医療に手が届かない貧困層への廉価で効果的な医療サービス体制の確立モンゴル政府が本事業をモデルとして全国に普及できるような「社会装置」としてのモデル事業づくり、が掲げられた。

以上のことからわかるように、配置薬の目的は明らかに地域医療の一画を担わせることである。そこには公的な配置薬の役割がある。タイ、ミャンマーのプロジェクトも同様である。一方、富山で始まり、330年以上の歴史がある我が国の配置薬は、地域医療に関与してきたことは事実であるが、モンゴル、タイ、ミャンマーと大きく異なるのは、公的というよりは民間ベースで発展してきたということである。江戸時代の富山藩の財政にも大きく貢献している。明和年間、富山藩の財政規模が10〜13万石の頃、売薬仲間が藩に3000両もの上納金を納めていたことが記録に残っている。その後も富山の薬は様々な産業にすそ野を広げ発展してきた。『先用後利』は文字通り、後から利益を得るということであった。しかし、モンゴル他で進行中のプロジェクトは『先用後利』というよりも『先用後払』という意味合いが強い。立場による受け取り方の違いなのであるが、公的ということになれば、後者の配置薬システムということになろう。赤字にならなければそれでよく、利益はあまり追求しないで、あくまでも市民のプライマリヘルスケアに重点が置かれる。

WHOからは伝統医療を媒体としたアセアン諸国のプライマリヘルスケアの今後の見通しについての報告があった。もちろん、主となるのは配置薬事業である。議会の最後に、モンゴルで強力に配置薬事業を進めてきた日本財団からコメントがあった。「日本では300年以上もの歴史と伝統がある配置薬システムは衰退しつつある。また、配置薬が公衆衛生に寄与してきたことの証左となるデータが一つもない。今までに研究されてきたことがなかった。残念なことである」と。その意見の通りだと思う。今後速やかに学術的調査を行い、研究成果を世に出すべきであろう。そして、地域医療の担い手として、またプライマリヘルスケアにおける配置薬の立ち位置を再認識することが、今後の富山売薬の発展の鍵を握っていると言える。



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