樹木や荒地をも覆い隠すほどに繁茂する蔓性の草本で、国内のどこにでも見られる植物です。クズという読みが「屑」を連想させ、樹木に巻き、枯らしたり、電信柱や鉄柱に絡み着く厄介な植物であるかのように思われがちです。葛の語源も草冠と「曷」で、木などに絡み着いて高く上がる草を意味しています。反面、日本人にとってこれほど役に立っていた植物は他にはありません。クズの発音は吉野川の上流に住む国栖(くにす)と呼ばれる人たちの呼称から付けられたとされています。現在も吉野地方に国栖(くず)という地名が残っています。この地方で葛の根から取ったデンプンを吉野葛と言い、和菓子などに用いられています。また、古代の人々は葛布といって蔓の繊維から織られた布を身にまとい、硬い蔓で編んだ篭を葛篭(つづら)言い、栄養価の高い葉や若い蔓、花は山菜として、また家畜の飼料に使っていました。勿論薬用に使われていることは周知の通りです。
植物の特徴
北海道から九州、朝鮮、中国に分布し、飼料、砂防用に世界各国で栽培され、北アメリカでは野生化している大型の蔓性植物です。根は太く、長く大量のデンプンを含んでいます。花は赤紫色で、奄美大島以南に自生する紫色花のタイワンクズとヒマラヤから中国、インドシナ、フィリピンに自生する青紫色花のシナクズの中間型です。
生 薬
秋から春にかけて掘取り、外皮を取除いてから縦割りして乾燥します。根が太く、質が堅く、白色で紛性に富んだものが良品です。
成分はイソフラボン化合物のプエラリン、ダイゼイン、ダイジイン等です。
薬効および使用法
発汗、解熱、鎮痙薬として次の漢方薬等に配合されます。
1.葛根湯
2.葛根湯加川芎辛夷 鼻づまり、蓄膿症、慢性鼻炎
3.葛根黄連黄 湯 急性胃腸炎、口内炎、舌炎、肩こり、不眠
4.葛根紅花湯 あかはな、しみ
その他、風邪の初期にデンプンを葛湯(くずゆ)として、花は二日酔いに使います。