投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-8-6 11:29:05 (136 ヒット)

フランスの農業食糧省というキャリアを持つ主人公の物語。
明らかに、題名にある「セロトニン」がキーワードだが、そのせいだかなんだか、荒唐無稽な挿話があっちこっちに飛び火する。抗うつ剤に頼る人物の心象風景(女性遍歴が中心)を描いたとしたら、こんな風になる、と思わせる一例。自分的にはそれほど高評価ではないが、フランスではどう読まれているのか気にかかる。村上春樹的な存在なのかな。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-8-6 11:28:21 (120 ヒット)

本書の紹介文として「2022年フランス大統領選で同時多発テロ発生。極右国民戦線のマリーヌ・ルペンと、穏健イスラーム政党党首が決戦投票に挑む。世界の激動を予言したベストセラー」というのがあるが、それほどスリリングな内容ではない。どちらかといえば文学的志向の強い、私が苦手とする、作品といえる。物語はゆっくりと進んでいく。フランス人のインテリな主人公がいかにして、イスラム政権とイスラム教に取り込まれていくかが描かれている。武力によらない穏健な政権移譲。カトリックに対するイスラム教、現代民主主義の破綻に忍び込む形で描かれるイスラム教。主人公は葛藤の中からイスラムへの帰順へと導かれていく。ある意味怖い、サスペンスともいえる。久しぶりに二度読みしてそう感じた。最後に作品中でカギとなった言葉を挙げておく。
「ポルト」 「イスラム政権」 「オイルマネー」 「ユイスマンス」 「O嬢の物語」


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-7-20 14:07:53 (109 ヒット)

一小節が長く、一文がとてつもなく長い文章。それが延々と繰り返され、そして続く。その長い一文節の始まりと終わりとでは別の話になっていることもしばしば。こんな書き方に出会ったのは初めて。訳者もさぞ大変だったろうと慮る。延々と繰り返される似たような挿話の連続だが、微妙な変化球が常に仕込まれていて、期待を裏切られたり、先が全く読めない「へんてこな」物語になっている。ほんとうに変な作品だ。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-7-20 14:07:10 (128 ヒット)

「ドラキュラオタク」が描くドラキュラ小説。「ドラキュラ」はファンタージーでもなくサスペンスでもなく、ホラー、ミステリーでもない「ドラキュラ」として一つのジャンルが確立している。そんな中にあって、この作品には「ドラキュラ」ファンが喜ぶ題材が随所に散りばめられている。
また、邦訳者もかなりの「ドラキュラ」マニアとお見受けした。ただ原書に忠実に訳せばよいというものではなく、原書との整合性はもちろん大切だが、邦訳者自身が本作品を楽しんでいる、そんな感じがした。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-6-16 15:11:13 (143 ヒット)

主人公の調所広郷は江戸時代末期に藩の借金五百万両という財政難を立て直した人。とはいえ、5分だけ払って、残りは250年の割賦払い、というのだから、ほとんど棒引きに等しい。はたして、その支払いがいつまで続いていたのだろうか、気になるところ。廃藩置県となった後も返却はなされていたのだろうか。

関ヶ原以来、薩摩藩というのは特異な国だとの印象が強い。徳川の世に入ってからも、表向きは幕府に従うように見せながらも、琉球支配に見られるように独自路線もまた別に歩んでいた。江戸から遠いことも一つの要因なのだろうが、それだけでは語れない何かがある。本作品は薩摩藩のなんたるかの一端を垣間見せてくれる。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-6-16 15:08:56 (129 ヒット)

図書館に行くたびに桜庭一樹の本を物色しているのだが、なかなか新刊が出てこない。久しぶりに新刊コーナーに立てかけてあったので即ゲット。

題名から、手塚治虫の漫画の焼き増しであることは想像できる。しかし、本家火の鳥には「大地編」はない。ウイキペディアによれば、シノプシス(構想・企画段階)のみで、作品には至らなかったとのこと。桜庭一樹はこのシノプシスをもとに、彼女得意のマジックリアリティーの世界を膨らませていった。

冒頭、登場人物の紹介が手塚治虫タッチの絵柄で紹介されている。しかし、これを見てしまうと、イメージというか先入観が先付けされてしまうので、あえて見ないで本文に入っていった。読了してからも見ていない。

舞台は日清戦争から始まる日本のドツボにハマる時代、中国奥深くに存在するという火の鳥を探す旅。「火の鳥効果」で時間の無限ループが発生し、そのたびに歴史が少しずつ書き換えられていく。なんだかキツネにつままれているような感じ。その、騙すような、そうでないような、微妙なストーリー展開が作者の真骨頂。個人の都合で歴史が変わっていいの?という素朴な疑問がわくが、それが本作品の一つのテーマにもなっている。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-6-16 15:06:58 (110 ヒット)

江戸川乱歩賞作品ということで手に取った。
冒頭のつかみは上々。だが、話が進むにつれてだんだん読むのが疲れてきた。起承転結でいえば、「承」「転」の運びが平易すぎて、スリル、推理感が湧いてこない。なので、「結」も取ってつけたような終わり方。登場する警察官らの姿も書き足りない。発想と主題がよかっただけに、残念な気がする。この人でなければ書けない作品という感じがしない。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-5-27 9:43:10 (156 ヒット)

「必殺仕掛け人」と誉田哲也警察物ワールドのコラボ。漫画チックな設定だが、こんな作品はもともと力量がある誉田哲也だからこそ書けるのだと思う。たまには、こういうノリの作品もよいのではとも思った。作者得意の青春物の空気感もうっすらと漂っている。
これで、誉田哲也の一連の警察物に幕を閉じたいと思う。彼の描く警察物は立体ジグソーパズルのようなもので、各作品はそれ自体単編として完結してはいるが、そこに出てくる登場人物、警察組織、事件は別の作品との関連性をもって描かれている。どの警察物にもそういった面はあるのだろうが、彼の作品ではそれが巧妙で、あたかも連続もののような印象を与える。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-5-27 9:42:24 (155 ヒット)

姫川玲子も出てこなし、東も、ガンテツも出てこない。新機軸を切り開こうとの思惑があるにしては、「ハング」以外はとりたてて目に付く場面はない。物語展開のうねりや緊張感、サスペンスに求められる切迫感もない。登場人物も描き切れてないし。キャラも立ってない。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-5-27 9:41:47 (170 ヒット)

冒頭のつかみには何かを感じさせるものがあったが、中盤以降設定に無理があるというか、安易に流れていった感があり、ちょっと残念。もの哀しさが残ったのがせめての救い。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-5-17 15:37:52 (115 ヒット)

前に読んだ「六人目の少女」も複雑だったが、この作品も頭がこんがらかるくらい手の込んだ物語展開だった。
最近読み込んでいる誉田哲也の作品の中に、政府高官の悪行をインターネット上で公開し、その犠牲となった家族のものがそれを閲覧しそれらに制裁を加える、というのがある。一見関連性のない殺人事件が、捜査の過程を経て、全体を俯瞰していくとそれが意図された事件だと判明してくる。本作品の手法はある意味それと似ている。あちこちで起こる殺人事件の関連性はなかなか見えてこない。誉田哲也の作品でインターネットに情報を暴露した影の首謀者の役割を果たしているのが本作品では教誨師という聖職者。罪を犯した者が教会に懺悔に赴くが、その告白内容を含めた個人情報は教会にデータとして蓄積される。その罪を法をもって裁くのではなく、教誨師は親戚縁者にそれを伝え戒めとして復習の機会を与えるというもの。その主題に二重に三重にひねりを加えているのだが、それを過剰演出と採るか面白みが増したと採るか、評価が分かれるところであろう。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-5-17 15:35:59 (111 ヒット)

「硝子の太陽 ルージュ」と対をなす作品だが、別々の出版社から出されているというのも面白い。ルージュで不完全燃焼となった穴を埋めてくれはず、と期待して手に取った。中盤ごろからルージュとのリンクが見られる。ルージュとノワール、同時出版なのでどちらから読んでもお楽しみ度合いは一緒のはずだが、ルージュの方を先に読んだからかもしれないが、どちらかといえばルージュが主でノワールがその補完というイメージ。ルージュで回収損ねた布石はかろうじて回収されてはいるが、なんとなく辻褄合わせという印象がぬぐえない。ルージュで描かれたような深い闇を期待したのだが、それとは真逆の筆致に拍子抜けした。まぁ、これも作者の懐の深いところだと言えなくもない。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-5-17 15:34:54 (146 ヒット)

ロック系バンドガール「夏美」の青春ストーリー、第二弾。
バンド仲間の死を乗り越えて、芸能プロダクションに入ってからも自分の道を突き進む夏美の物語。ハチャメチャぶりは相変わらず、ちょっとやそっとの困難にはめげない夏美。新たな仲間との出会いによって、より大きく羽ばたいていく姿が微笑ましい。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-5-16 17:49:17 (137 ヒット)

ロック系バンドガール「夏美」の青春ストーリー。
たぶんこれもバンド女子のバイブルとなっているのだろう、軽いタッチで気軽に読める。剣道女子のバイブル「武士道」シリーズ、警察官のバイブル「姫川玲子」シリーズ、と並ぶ。総じて女子青春物語を描くのがとてもうまいが、そこに作者が得意とする「バンド活動」をからませている。ただの「バンド系女子物語」に収まらず、ちょっとしたひねりが加えてあるのがよかった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-5-16 17:48:18 (108 ヒット)

「ジウ 機廚鯑匹鵑任ら、しばらくたったので再度気ら読み直しした。
気任倭杼もつかなかった物語展開には度肝を抜かれた。暴力的な場面はこれでもかこれでもかというほど残虐に描かれ、心情的場面はとつとつと語られる。サスペンスを軸としながら退廃的な「新世界秩序」世界を脇として、残虐的、心情的挿話をうまく組み込ませて第一級のエンターテイメントに仕上げている。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-5-16 17:47:45 (142 ヒット)

誉田哲也の魅力「青春物語、警察物、姫川玲子、私的制裁、永田町の闇」満載の傑作。特に、青春物語と警察サスペンスとの融合が秀逸。最初の頃に引き込まれた姫川玲子の闇は作品を追うごとに薄れていって、警察組織と永田町そして社会の闇の色合いが濃くなってきた。姫川玲子が物語構成の一部分的な扱いになっているのがちょっと残念。また、布石の回収が完全でなく疑問が残る。なので、★一つ削った。続編があって、その点が回収されないことには、この作品はもう一つ★を落とすことになる。この点、他の読者はどう評価するのだろう。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-5-16 17:46:38 (110 ヒット)

相変わらず、残虐シーンと心情的場面との組合せが絶妙。先に読んだ「ノーマンズランド」同様、布石の回収が不完全、と思ったら、同時発刊の「ノワール」と対の作品であったらしい。なので「ノワール」を読んでみないことには下手なことは言えない。また、「ジウ」シリーズとの絡みもあって、読みかけの「ジウ」を最後まで(供↓掘貌匹猊要性を感じた。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-4-17 17:18:08 (168 ヒット)

久しぶりにわくわく感マックスに達したミステリー。
シリアルキラーを追うのだが、手掛かりをもとに犯人に近づいたと思ったら、そこにはまた別の犯人の手によるものと思われる殺人事件が絡んできて、それがまた物語全体の入れ子になっていくというややこしいい構造。それでいて作品としての調和を保ち破綻がない。単なる布石の回収という手法に寄らない複雑に仕込まれた物語構成に新鮮味を覚えた。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-4-17 17:12:44 (996 ヒット)

リンカーン・ライムから離れた新機軸の物語。今度は懸賞金稼ぎの探偵コルター・ショウが主人公。ジェフリー・ディーヴァーの作品はいつも社会現象からヒントを得て、それをバックグラウンドとした悪役を設定している。その着目点の掘り下げ方の深さが読み手の好奇心を満たしてくれる。今回は「ゲーム業界」がまな板の上に載せられた。物語の進行具合、展開はリンカーン・ライムとさほど変わらない。軽いどんでん返しの繰り返しの後に来る大きなどんでん返し。新シリーズは楽しみのような気がするが、ストーリー展開に真新しさが感じられないのがちょっと残念だった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-4-17 17:12:11 (130 ヒット)

手放しで微笑ましいと思える物語、そして絵にかいたような女子の青春ストーリー。仕事に躓いて落ち込んでいるとき、怪我や病気で入院しているとき、そんなときに読めば間違いなく前向きな気分にさせてくれるだろう。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-4-17 17:10:54 (137 ヒット)

誉田哲也の作品はどれもよくできている。そういうレベルからすれば本作品はちょっと満足度が足りない。手を抜いたわけではないと思うのだが、筆致が軽く(というか軽すぎる)、作者の息抜き的な作品という印象を与える。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-4-17 17:10:21 (140 ヒット)

短編集。姫川玲子が活躍した物語は読んだそばから忘れてしまったが、彼女が昇進のための受験勉強のために利用した本屋さんの喫茶室から始まる物語は印象に残っている。女性視点の路線も作者の得意とするところ。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-4-17 17:09:48 (110 ヒット)

これも社会悪への私的制裁が主題となっている。誉田哲也はこういう世の無常をあぶり出すのが好きなのか、得意なのか、そんな作風が一つの路線にある。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-4-17 17:09:09 (136 ヒット)

殺人の連鎖、といってもシリアルキラーを描いたものではない。「一寸の虫にも五分の魂」という諺を犯罪に当てはめるとこんな物語になるのかもしれない、「殺人にも一分の理」。社会が生みだした「悪」は誰が清算するのか、私的制裁の話でもある。かといって殺人が許されるわけもなく、むなしさが残るだけ。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-3-8 15:27:58 (127 ヒット)

姫川玲子シリーズ。
犯人は中盤で予想がついたが、一つだけ見逃していた点があった。それは、最後になってわかるのだが、たぶん多くの読者は何気なく読み捨てていた場面だろう。
三ツ星でもよいのだが、期待した姫川玲子の「闇」が出て来ないので★一つ減らした。題名の付け方に?マーク。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-3-8 15:27:10 (120 ヒット)

姫川玲子シリーズ。
後半になってから、姫川玲子の「闇」が読み手の心をくすぐる。
映画になった「ストロベリーナイト」は原作となった「ストロベリーナイト」よりもこちらの作品の方がイメージ的により深くかぶる。
複数の物語が綾をなしている。副題となっている警察の組織防衛はそれなりの出来だが、主題を構成している物語の展開は全く読めなかった。それらに姫川玲子の「闇」がうまく重なってきておもしろさ拍車をかけている。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-3-8 15:25:06 (151 ヒット)

誉田哲也は心の闇を炙り出すことに主眼を置いた警察物も読ませるが、この作品のような青春群像を描くのがとてもうまい。作者としてはどちらが本当に描きたい分野なのか、今の時点ではわからない。
バンドや楽器をやっている、そういう業界の人が読めばより深くこの作品に入っていけるのだろうが、そうでなくてもとても面白く読ませてくれる。
ハッピーエンドで終わるちょい手前あたりの泣かせる場面が印象に残った。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-3-8 15:24:34 (139 ヒット)

姫川玲子シリーズ。
警察物の短編集は初めて手にした。どちらかといえば長編が好みな自分だが、この手のものに縁が無かったのは単に食わず嫌いだったためだろう。それぞれのヤマはうまく解決していくのだが、読み応えという点から捉えるなら、読後の満腹感にいま一つ欠ける。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-3-8 15:06:46 (153 ヒット)

久しぶりの星七つ。作品ごとに題名が異なるが、続き物なのでまとめて感想を書くことにした。4作品とも、紅白二本のしおり紐がついている。剣道の試合のとき、背中に付ける「タスキ」を模したもの。私もよく覚えている、試合の前に仲間や後輩や誰かが背中の胴紐にタスキを結んでくれる、あの感触。剣道において紅白のタスキは特別な意味を持つ。

「武士道 シックスティーン」が書かれたのが2005年、そして最後の「ジェネレーション」が出たのが2015年。この間、少女たちの成長に沿って「セブンティーン」「エイティーン」が出版されている。

これは漫画だ、絵のない漫画。剣道女子の中学から高校、大学そして卒業した後までを描く青春物語。何も考えなくてよい、ただただ彼女たちの心の内を辿るだけでいい。池井戸潤の「半沢直樹」が銀行マンのバイブルとなったように、おそらくこの作品は女子男子を問わず剣道少年のバイブルとなっているのではないかと推察する。そう思うのはもう老人の域に入った自分だけなのだろうか。現役剣道女子の声を聴いてみたい。

それぞれの巻末の文章が各々の物語を象徴しているので添付しておこう。

「武士道 シックスティーン」
大きな拍手を浴びながら、お互いに構え、剣先を向けあう。
この場所で再びめぐり合い、この相手と戦う、喜び。
最高の舞台で迎えた、最高の相手。
この時代を共に生きる、二人といない、好敵手。
さあ、始めよう。
わしたちの戦いを、わたしたちの時代を。
これが新しい、武士道の時代(研究中)の、幕開けになるー。

「武士道 セブンティーン」
わたしたちは、それぞれ別の道を歩み始めた。
でもそれは、同じ大きな道の、右端と左端なのだと思う。
その道の名は、武士道。
わたしたちが選んだ道。
わたしたちが進むべき道。
果てしなく続く、真っ直ぐな道。
そしてまたいつか、共に進むべき道―。

「武士道 エイティーン」
わたしたちは、もう迷わない。
この道をゆくと、決めたのだから。
急な下り坂も、下り坂もあるだろう。
枝分かれも、曲がり角もあるだろう。
でも、そんなときは思い出そう。
あの人も、きっと同じように、険しい道を歩み続けているのだろうと。
そう。すべての道は、この武士道に通じているー。

「武士道 ジェネレーション」
同じこの道を、わたしたちは歩んできた。
かけがえのない出会いがあった。
心震えるような学びが、骨身を削るような試練があった。
しかし今、来た道を振り返ることはしない。
命ある限り、わしたちは進まねばならない。
この武士道を、続く者たちに、伝えなければならないー。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-2-23 17:58:46 (119 ヒット)

このところ、「ノワール」から遠ざかり、すっかり変化してしまった馳星周。
この作品もその一冊。一匹の犬が、東北から九州へと飼い主を替えながら辿る数奇な運命。そして、最後の最後まで予想もつかない物語と結末。先の見えない展開にぐいぐい引き込まれていった。

「ノワール」の頃は、これでもかこれでもかという書き込みと筆圧に圧倒された感があるが、本作品ではそれとは真逆の筆遣いがみられる。つまり、できるだけそぎ落としたスリムな文体と文章。比べるのもなんなのだが、ちょっと前に読んだ冲方丁の「アクティベイター」の対極に位置する作風だ。「語らずして語る」とでもいうのだろうか、それは絵でいうところの「描かずして描く」、木彫でいえば「彫らずに彫る」という境地。
直木賞を獲ったのも頷ける。


« 1 2 (3) 4 5 6 ... 20 »