投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-23 19:28:26 (438 ヒット)

ジェフリー・ ディーヴァー 著 ★★★ 文藝春秋

「石の猿」を読み終えてから、やはりシリーズ第一作から読みたいと思っていた。リンカーン・ライムの四肢麻痺については、これで納得がいった。事件の捜査中の事故で、一命をとりとめたものの、なんとか自由になるのは左手の薬指と顔だけという非常に重度な障害を負ってしまった。ライムはまるで死に体の自分に対して、生きている証を見つけられず、そんな自分には死は当然の権利だと考えてしまう。幾人ものセラピストとの触れ合いからも、その意志は変わらなかった。しかし、彼に未来への希望を抱かせたのはたった一人の女性、アメリアサックス捜査官だった。愛にも勝る妙薬はないのか、とあらためて感じ入ったしだい。
さて、物語ではライムの緻密な捜査手法が次々に披露される。犯人暴きも楽しみだが、これまでにはなかった「証拠」の分析には何度もうならされてしまった。ジェットコースター・サスペンスとはダン・ブラウンの十八番かと思っていたが、ジェフリー・ ディーヴァーもその第一人者であった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-21 7:14:56 (525 ヒット)

名前も知らない花で、あまり気にもとめていなかったのだが。なかなかどうして。貴婦人という異名があるという、さもありなん。






投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-17 19:13:09 (736 ヒット)

うまいこと梅雨の晴れ間が来てくれた。仕事も一区切りついたし、山でも行ってくっか。

片貝川の瀬音を背中に浴びながら登り始める。すでにヤマゼミが鳴いている。木立が日よけとなる急な登りをいくと、1300メートルぐらいから鳥のさえずりが聴こえてくる。ウグイスは練習期間が終わったとみえ、江戸屋猫八もびっくりするくらいの名調子。1600メートルの登りにさしかかる辺りからカタクリロードが始まる。行けども行けども、カタクリの群生は尽きることがない。そして最後は、僧ヶ岳の魔女、シラネアオイのご登場。初夏の山を楽しんできた。登り2時間40分、下り2時間5分。今日の収穫はエラとコシ。どちらも天ぷらにした。さて、ビールだ。








投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-14 5:49:42 (475 ヒット)






投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-13 20:36:16 (436 ヒット)

手嶋龍一 著 ★★ 新潮社

NHK元ワシントン支局長の手嶋氏は特派員としてよくテレビに出ていた。商社など海外勤務となれば、外交のお手伝いから、来訪者の接待、旅行ガイドまで八百万のことをこなさねばならない。それはNHKであっても例外ではないだろう。そうして築かれた人脈こそが彼らにとっての資産となり、会社の財産となる。より精度の高い、的を得た報道はそうした地道な活動から生まれてくる。本書にはそんな筆者の経験がもとになっていると思われる箇所が随所に見受けられる。偽100ドル札に秘められた陰謀と、それを巡って繰り広げられるインテリジェンスの世界。まるで見てきたかのように描かれているのは、さすが報道マンというところ。ただ、話がうまいこと運びすぎるのと、全てにおいて上辺だけというか描写が足りないというか、そのせいか、深く心に入り込んで来ない。話の筋とモチーフは秀逸だと思うのだが、そのへんが気になった。結末にいたっては、なんだこれ?という終り方。本当にもったいない。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-13 20:32:51 (452 ヒット)

スティーヴ・オルテン 著 ★ 角川書店

先史時代のサメ「メガロドン」(古生物学的には歯の化石も発見され、実在していたと思われる)が深海に封じ込められ、現在まで生き延びてきたという設定。B級映画を観るような感じで、深みはない。古書店で100円というのもうなずける。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-11 20:33:34 (740 ヒット)

富山配置薬の国際展開と今後のためのシンポジウム

モンゴル医師研修団及びタイ保健省行政官が、富山県を中心に配置薬システムの研修を行うことに合わせ富山市で開催された。WHOからは伝統医療責任者も参加。富山配置薬システムが、モンゴルおよびアセアン諸国で活用され始め、これらの各国の現状と今後の発展に関して、広く関係者に理解して頂き今後の活用を討議するためである。

モンゴル、タイ、ミャンマーにおける配置薬プログラムについての報告が、各国代表よりなされた。2004年モンゴルで試験的に実施された配置薬事業は、世界銀行からのローンを受けることを視野に入れ、今や国家的プロジェクトになりつつある。それは国民からの支持を集めていることの証左だ。実際、成果も上がっている。昨年度のデータでは、医師の往診の回数が事業を始める前とでは2割減ったということである。公衆衛生の向上とプライマリケアの充実による、より重篤な疾病の予防を目的としている。そのために選ばれたのが近代的な西洋医学ではなく、モンゴル固有の伝統的な医療の普及であった。その三つの柱として、.皀鵐乾觜颪寮祥琉緡鼎紡个垢訛綢悄κ箚旭緡鼎箸靴討離皀鵐乾訶租医療の社会的普及⊇縞な医療サービスを受けられない地方住民や高価な西洋医療に手が届かない貧困層への廉価で効果的な医療サービス体制の確立モンゴル政府が本事業をモデルとして全国に普及できるような「社会装置」としてのモデル事業づくり、が掲げられた。

以上のことからわかるように、配置薬の目的は明らかに地域医療の一画を担わせることである。そこには公的な配置薬の役割がある。タイ、ミャンマーのプロジェクトも同様である。一方、富山で始まり、330年以上の歴史がある我が国の配置薬は、地域医療に関与してきたことは事実であるが、モンゴル、タイ、ミャンマーと大きく異なるのは、公的というよりは民間ベースで発展してきたということである。江戸時代の富山藩の財政にも大きく貢献している。明和年間、富山藩の財政規模が10〜13万石の頃、売薬仲間が藩に3000両もの上納金を納めていたことが記録に残っている。その後も富山の薬は様々な産業にすそ野を広げ発展してきた。『先用後利』は文字通り、後から利益を得るということであった。しかし、モンゴル他で進行中のプロジェクトは『先用後利』というよりも『先用後払』という意味合いが強い。立場による受け取り方の違いなのであるが、公的ということになれば、後者の配置薬システムということになろう。赤字にならなければそれでよく、利益はあまり追求しないで、あくまでも市民のプライマリヘルスケアに重点が置かれる。

WHOからは伝統医療を媒体としたアセアン諸国のプライマリヘルスケアの今後の見通しについての報告があった。もちろん、主となるのは配置薬事業である。議会の最後に、モンゴルで強力に配置薬事業を進めてきた日本財団からコメントがあった。「日本では300年以上もの歴史と伝統がある配置薬システムは衰退しつつある。また、配置薬が公衆衛生に寄与してきたことの証左となるデータが一つもない。今までに研究されてきたことがなかった。残念なことである」と。その意見の通りだと思う。今後速やかに学術的調査を行い、研究成果を世に出すべきであろう。そして、地域医療の担い手として、またプライマリヘルスケアにおける配置薬の立ち位置を再認識することが、今後の富山売薬の発展の鍵を握っていると言える。




投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-11 5:28:16 (449 ヒット)

宮尾登美子 著 ★★★ 宮尾登美子文学全集 朝日新聞社

「櫂」を読んだら次に読みたくなるのが、やはりこの「春燈」である。
「櫂」では主人公の母親の視点で描かれているが、「春燈」は主人公の目線で書かれている。宮尾登美子は出だしがうまい。さらりと、あれやこれや話題を拾っていきながら、いつの間にか主人公の世界に入っいる。
幼少の頃から、小学校の代用教員となり求婚されるまでが描かれている。ほのぼのとした純真な少女の成長記である。主人公の存在は一服の清涼剤のようなものであり、朝の連続ドラマを彷彿させる。求婚される場面ではなぜか目頭があつくなる。ふむふむと次のページをめくってみたら、そこで終わりだった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-8 6:16:28 (462 ヒット)

トム・クランシー 著 ★★★★★ 文春文庫

ハイテク軍事サスペンス
東西冷戦時代、ソ連の最新原潜「レッドオクトーバー」がアメリカに亡命する。CIAの話や、潜水艦の話、手に汗握る展開。描写力、ストーリーもさることながら、そこに携わる人間を描くのが実にうまい。読みきったときの感動、充実感は最高です。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-8 6:15:48 (396 ヒット)

トム・クランシー 著 ★★ 新潮文庫 全四巻

四巻は多いので、二巻にして欲しかった。
「ジャック・ライアン」シリーズはどれもお薦めなのだが、この作品にはやや期待をそがれた感がる。お気に入りの潜水艦乗りやパイロットが出てこないせいもあるし、アクションシーンが少ないこともある。ライアンの活躍はこれまですさまじいものがあり、次などんは展開になるのかと期待して買った人が大半ではないだろうか。作者もその点、ファンの要望にどう応えるか、並大抵の話では満足できないのは十分承知のはずだ。話をライアンの初期の頃に戻したのは苦肉の策ではなかったろうか。私としてはもっと大活劇を期待したかった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-8 6:15:08 (468 ヒット)

ダライ・ラマ 著 ★★★ 文藝春秋

ダライ・ラマ幼少のときから1959年の亡命政府設立、その後30年にわたる亡命生活について、その時々のエピソードを交えながら語っている。中でも、ラサからインドへの国境越えは相当の苦難であったことがうかがえる。
中国はチベットを帝国主義者からの開放の名の下に侵略し、多くの寺院の破壊をはじめとして民族文化の破壊、民族の独自性、独立性を奪い取った。ダライ・ラマをはじめ多くのチベット人が世界各国に避難し、チベット国内の同胞と共にいつの日か祖国が自らの手に戻ることを願っている。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-8 6:14:26 (472 ヒット)

スティーヴン・キング 著 上・下 ★★★ 文芸春秋

最初いくつかの話のネタを書き足していった内容だったが、読み進むにつれて加速度的に面白みが増してくる。主人公らはなぞの物体の影響で特殊能力が備わる。と同時に体にも変化が生じ、歯が抜けてしまう。これを読んでから自分の前歯の下の先端が欠けました。なんか怖かったです。

この本は進化論学者グールドの「ワンダフルライフ」から辿り着きました。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-8 6:13:48 (431 ヒット)

スティーヴン・キング 著 上・下 ★★★ 文芸春秋

「いいもん」と「ワルもん」のお話。読みながらブックカバーのイラストを何度も何度も見返した。本の内容も期待を裏切らないが、もっとすごいのは、この2枚のイラストで物語のすべてを言い表しているところ。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-8 6:13:09 (521 ヒット)

ジョー・R・ランズデール 著 ★★ 早川書房

1958年のアメリカの小さな町が舞台のミステリー。主人公の少年時代の回想という形をとっている。少年たちの交流や、家族の絆があたたかく描かれており、少年文学といってもなんら問題はない。
当時のアメリカの生活様式がよく分かる、すでにドライヴインシアターや冷房クーラーが一般化していたのには驚いた。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-8 6:12:27 (428 ヒット)

T・ジェファーソン・パーカー 著 ★★★ ハヤカワ・ノヴェルズ 
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞

誘拐事件を追っていきながら、主人公を完璧に描き出している。女、金、政治とモチーフはよくある設定だが、登場人物の存在が実にリアルに伝わってくる。最初は淡々とした、散文的な文章にややとまどったが、これが次第に悦に入ってくる。日本語訳なのでなんとも言えないが、おそらく原著もこうした文体で書かれているのだろう。主人公の飾り気のない人物像を表現するのにも一役かっていいる。「サイレント・ジョー」というよりも「セイント・ジョー」といってもいいくらいだ。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-8 6:11:32 (570 ヒット)

グレッグ・ベア著 上・下★★★ソニー・マガジンズ
遺伝子ウイルスサスペンス

最初に雪山のシーンが出てくるので山本にしたかったけど、ちょっと無理っぽいのでやめました。ヒト内在性レトロウィルスがなんたらこうたら。進化論がらみとなると興味をそそられます。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-7 6:05:04 (433 ヒット)

宮尾登美子 著 ★★ 新潮社

「櫂」から始まる3部作に引き続き、少し間を置いて書かれた続編。満州から文字通り裸一貫で引き上げてきて、やっとのことで辿りついた故郷。そこにとうとうと流れる仁淀川を見て、綾子は生きて帰り着いたことを実感する。そこで一年ぶりにつかる風呂。本来ならえにも言われぬ幸福感に満ち溢れるはずなのだが、綾子には全くそれが感じられなかった。そして、息つく暇も無く、日々の生活に追われていく。
先の作品の回想を散りばめながら、話は進行し、いつの間にか農家に嫁いだ綾子の物語へと移っていく。そしてそれは、母の喜和との通い合い、父岩伍の余生のことどもを交えた話と絡み合い、「櫂」シリーズの幕引きへと向かっていく。出だしと最後の一文が印象に残る作品であった。
ネット上の書評には続編をのぞむ声も聞かれるが、この物語はこれで終わりではないだろうか。喜和と綾子と岩伍の三人があってこその「櫂」だと思う。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-7 6:04:07 (336 ヒット)

宮尾登美子 著 ★★★★★ 新潮文庫 第9回太宰治賞(昭和47年)

高知の言葉と富山弁とが似ている様に感じるのは私だけだろうか。前々からそう思っていたのだが、この本でやっぱりとうなずくのであった。
和文というのがあるのなら、宮尾登美子の文章はまさしくそれだ。読んでいてまず心が落ち着く。見たまま、思ったまま素直な気持ちで書いている。始まりの心和むような話からは予想もできない結末。途中で「なんとかしてやってくれ」と願うことしきり。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-7 5:52:44 (593 ヒット)

気に入りのオーニソガラムアラビカム。今年も順調に育ってくれた。






投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-5 5:04:14 (420 ヒット)

秦建日子 著 ★★★ 河出書房新社

旅先で昼間何気なくテレビを見ていたら、思いの他引き込まれていった推理物のテレビドラマがあった。それが「アンフェア」の再放送だった。それも初回からではなく、途中の2回目だか3回目ぐらいからで、誰が犯人だか本当に見当がつかない。しかも、最終回までは見ることができなかったので、犯人は分からずじまい。筋もしっかりしていて、配役もはまっている。よく出来たサスペンスだ。主人公の篠原涼子の刑事役がまた破天荒かつ魅力的で、新しいヒロインの登場といったところか。しばらくして家に帰り、ネットで調べてみて、今年の春に放映された本放送でもかなりの人気と視聴率を得たらしいことを知った。ちゃんとしたものを作くれば、みんなが共感できる作品に仕上がっていくということの証であろう。
ドラマのエンディングには原作となった本書と著者が流されていて、これはなんとしても読まねばならぬと思った。これまで小説を読んでいて、これがスクリーンに写し出されたらさぞ楽しいだろうなと、思ったことは幾度もあるが、その逆のことはほとんど思い当たらない。しかしなぜか、このドラマに限って、原作を読んでみたいという衝動にかられた。話の結末を知りたい、という気持ちもあって、わくわくして手に取った。ところが、その日の夜「アンフェア」の特別バージョンの放映があった(この偶然の一致はいったい何ののだろうか)。これは見逃せないと思い、眠たいのを我慢して見ることにした。そこでは、前シリーズのフラッシュバックが前振りとしてあって、なんと犯人が分かってしまったではないか。そんな状況の中で、読んだ一冊だった。
驚いたことに、ドラマの中では原作がほぼ忠実に再現されていた。逆に本書を読んでからドラマを見たとしてもさほど違和感は抱かないであろう。と思う。文章は劇のト書きとセリフを思わせる書きぶり。むしろ劇の脚本に近い感じ。著者はシナリオライターなので、こういう書き方が自然体なのかもしれない。読み進むにつれて、ドラマのシーンが頭の中に呼び起こされ、文章から受けるイメージと交錯する。なにか新しい本の世界を味わった感がある。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-4 6:04:44 (658 ヒット)







ガーベラは面白い花だ。茎が延びてその先に花芽がつくのかと思っていたら違っていた。まだ幼生のうちから花芽ができて、それが時間とともに大きくなる。花の赤ちゃんが育って、やがて大人になっていく。そんな感じ。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-3 5:46:25 (389 ヒット)

小説 京極夏彦 著 ★★ 講談社 

探偵、榎木津礼二郎が絡む中篇小説三篇。
それぞれ、招き猫、鏡、お面がモチーフとなっている。いつものごとく妙ちくりんなやり方で榎木津が事件を解決していく。彼の子分のような脇役が登場するが、これがまた、見ていてかわいそうなくらいに榎木津に感化、翻弄される。それはそれで面白く、おかしいのだが、冗長にすぎる印象を与えた。京極堂はこういったウイットに富んだ作風も好きなのだが、どちらかと言えばホラータッチの方への期待感が強い。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-3 5:45:53 (406 ヒット)

高嶋哲夫 著 ★★ 実業之日本社

大蔵省キャリアになれなかった東京地検特捜部の敏腕検事が、銀行合併の裏工作をあぶりだす。表向きは贈収賄劇の顛末ということになっている。しかし、そのまた影に潜む知られざる真実。そのために一人の財務省官僚が死ぬことになる。果ては日米間の裏取引までにまで及ぶ。話の筋はそう複雑なものでもなく、人間描写に見所がある。NHKの金融物のドラマを見ているような感じ。終盤に来て一気に筆圧が増してくる。贈収賄、殺人がモチーフなのに、読後はすがすがしさが残った。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-2 5:48:39 (410 ヒット)

塩野七生 著 ★★★ 新潮社

カエサルはルビコン川を渡ってローマに入る。元老院派に担がれた格好になったポンペイウスとの決着をつけ、その体制を磐石のものとする。しかし、これからという矢先に暗殺される。そして、カエサルの後継者となるオクタビアヌスの登場。ローマ一千年の歴史の中で最も重要な時期とされる紀元前1世紀の様子が詳細に第検第拘に描かれている。時期は共和制から帝政への移行期。カエサルはもちろん、かのブルータス、アントニウス、ポンペイウス、キケロ、クレオパトラ、オクタビアヌスという大物役者が勢ぞろいする。これがおもしろくないわけがない。次から次と繰り広げられる歴史絵巻にわくわくさせられる。様々なパーツによって成り立っている歴史のおもしろさ、その醍醐味がここにある。

著者は本書の中でこう書いている。
「歴史はときに、突如一人の人物の中に自らを凝縮し、世界はその後、この人の指し示した方向に向かうといったことを好むものである。これらの偉大な個人においては、普遍と特殊、留まるものと動くものとが一人の人格に集約されている。彼らは、国家や宗教や文化や社会危機を、体現する存在なのである。危機にあっては、既成のものと新しいものとが交ざり合って一つになり、偉大な個人の内において頂点に達する。これら偉人たちの存在は、世界史の謎である」ブルクハルト『世界史についての諸考察』より

『歴史的必然性が生んだ一人の人格』歴史のおもしろさはこの一言に尽きると思う。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-2 5:48:01 (429 ヒット)

塩野七生 著 ★★★ 新潮社

『ルビコン以前』と副題にうたってあるように、ちょうどシーザーがルビコン川を渡ったところで終わっている。まだまだ続く本シリーズであるが、ドラマの一つのクライマックスを迎えている。シーザーは前巻より登場しているが、本書ではまるまる全部シーザーについて書かれている。そして物語は次巻へと引き継がれる。ローマ時代のシーザーとは知らないものがないくらい有名だが、恥ずかしながら小生、彼が何をしたかについてはほとんど覚えが無い。本巻の圧巻は彼が残した『ガリア戦記』だ。それを詳細に辿った本巻だけでも読み応えは十分にあるが、前三巻を読んでいるとその重みが格段に違う。というよりも前三巻はこの巻のために、シーザーの物語のためにあったといっても過言ではない。著者はこれを書きたいがために長々と三巻にわたる前座を書いたとのではないか思ってしまう。元老院制が一つの統治の形として長い間その役を担ってきたが、いたるところでほころびが出始め、その役割はゆらいできていた。そこに現れたのがシーザーで、それは次の時代の幕開けとなる歴史的必然の予感がする。ガリアを制圧しても、元老院と対立することから国賊となってしまったシーザー、次巻ではどうなっていくのか興味津々。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-1 6:11:23 (424 ヒット)

浅田次郎 著 ★★★ 毎日新聞社

くすぶり小説。ラスベガスで一発逆転。くすぶり人生とオサラバ。おなじみ、涙と笑いの浅田節が炸裂。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-6-1 6:10:46 (439 ヒット)

浅田次郎 著 ★★★★★ 光文社

ピカレス小説クここにあり。
何回読んでもおもしろい、先がわかっていてもおもしろい。登場人物の個性が並じゃなく、それぞれ光っている。みんないい人ばかり。「せんびき屋」のメロンというのはここで覚えました。「戦場のマリア様」も印象に残りますね、患者さんの「スパゲティ状態」、なるほどとうならせてくれました。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-31 18:01:16 (692 ヒット)







いつも出かける大日平。この時期、小鳥のさえずりの大合唱は必見?もの。うるさいくらいに鳴いている。これが聴きたくて行ってきた。もう一つのお目当てはシラネアオイ。3年前に来たときは、崖た斜面一面に群生していた。思いもぬショータイムに心が躍った。ところが去年の同時期、一つも目にすることができなっかった。絶えてしまったのか、はたまた採り尽くされてしまったのか。それが気になっていた。見覚えのある斜面、やはり咲いていない。しかし、竹やぶのなかに一つ見つけ、さながら恋人との再会に似た感激。さらに、一つ、こちらにも、あちらにも。ポツリポツリとその生態を確認することができた。満足、満足。帰りはいつものように、一掴みのエラと十数本のススタケを採取。ビールの肴に。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-30 5:49:05 (528 ヒット)


富山市内のTさんを訪問しました。ご主人は会社を定年退職後、木工細工を始められました。しばらくしてから、木象嵌の魅力に引かれそちらにのめり込んでいったそうです。家の裏には専用の作業小屋まで建ててしまいました。所蔵の数々の作品を見せてもらいましたが、いずれも目を見張るものばかり。木象嵌というと小物ばかりだと思っていましたが、かなりの大作もありビックリ。淡い墨絵を思わせるようなものもあり、とても象嵌でできたものとは思えません。奥の深さを感じたしだいです。ほかにも、花を育てたり、山歩きを楽しんだり、友と酒を酌み交わしたりと大変充実した毎日を送っておられます。自分もやがてかくありたいと思ったのでありました。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2010-5-29 5:44:20 (428 ヒット)

フィリップ・カー 著 ★★★ 徳間書店

ウイルス、未来社会、月での生活などなど。おまけに「血」が主題となってSF度はかなり高い。やや難解な未来テクノロジーもでてくるが、深く考えないで読み進む。最後の最後になって話の脈絡が繋がる。


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