投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-11-2 12:19:55 (51 ヒット)

「憂愁(ヒジュン)」、イスタンブルへの想いを作者はこう表現していて、本書では頻繁にこの表現が使われている。
訳者はトルコ語でいうところの「ヒジュン」の言い回しに苦心したのかもしれない。「憂愁」をそのまま英訳すると「メランコリ」となる。だが、この自伝を読む限り、どうも「メランコリ」ではしっくりこない気がする。「ヒジュン」は「ヒジュン」なのであり、本書全体に漂っている雰囲気を表している。それが、感じられただけでも、この本を読む価値があったというもの。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-9-24 5:37:21 (71 ヒット)

図書館をぶらついていて、初めてトルコ人による本を手に取った。イスラムを背景とした小説としても初めて。ウンベルト・エーコ以来、このところ宗教を題材とした作品に惹かれる。ヨーロッパからトルコ、ペルシャの歴史を語るとき、宗教なくして成り立たない気がする。

オスマン・トルコのスルタンに仕える細密画の職人集団の物語。語り手が次々と変わる構成は作品に入り込むまでかなり苦労する作品が多いが、この作品はそんなことはなく、歴史的、宗教的素地がなくても、わりあいすんなりと入っていける。謎解きの要素も手伝ってか、ぐいぐいと引き込まれ読ませてくれる。

主題となっている伝統のトルコ細密画、何十年と描き続けた職人は、目を酷使するため、しまいには盲目になる人もいたとか。そして、それこそが、名人の証として尊ばれたという。そうまでして描かれた細密画とはいったいどんな絵なのか、とても興味のあるところではある。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-9-5 9:55:50 (90 ヒット)

「バウドリーノ」から始まったヨーロッパ詣で。
その後、「十字軍物語」「パックス・ブリタニカ」ときて、今本書にたどり着いた。「ローマ人」の物語から始まった歴史エッセイ(著者はこう定義している)の最後を飾る作品となった。曰く、「ローマ人の物語」の中ではほんの少しか触れられていないギリシャに対して失礼きわまりない、と思ったことが本執筆の発端だったとか。物語はスパルタとアテネを中心とするギリシャの都市国家の盛衰を、その時々に現れる名将を通して描かれている。スパルタとアテネの文化的相違に「ははん」となり、両国の攻防戦に手に汗握る。まるで三国志を読んでいるみたいな気。

最期はマケドニアのアレクサンドロス大王にかなりのページを割いている。アテネ、スパルタの自滅ともいえた歴史的空間に突如現れたアレクサンドロスはまさに必然的出現ともいえる。そして、その東征。大国を撃破しながらの大進軍だとの認識があったが、実は弱っちいペルシャを配下にして廻っただけだった。

さて、著者最後の歴史エッセイとなった本書の末尾に「十七歳の夏―読者へ」お題して著者の言葉が添えてある。その中の一文が心に響いたので書き留めておく。

***あなた方が書物を読むのは、新しい知識や歴史を読む愉しみを得たいと期待してのことだと思いますが、それだけならば一方通行でしかない。ところが、著者と読者の関係は一方通行ではないのです。作品を買って読むという行為は、それを書いた著者に、次の作品を書く機会までも与えてくれることになるのですから。中略 ほんとうにありがとう。これまで書き続けてこられたのも、あなた方がいてくれたからでした。中略 最後にもう一度、ほんとうにありがとう。イタリア語ならば「グラツエ・ミッレ」。つまり、「一千回もありがとう」***


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-9-5 9:48:27 (67 ヒット)

1897年、ヴィクトリア女王即位60周年記念祭の記述から始まる。
このころ大英帝国は絶頂期にあり、世界各地に植民地を持ち、まさに帝国の権威をほしいままにしていた。本書では、大英帝国の光芒史を描くのではなく、事情が異なる様々な植民地での苦心譚やそこに派遣された人々と現地人との触れ合いを通して、帝国の栄華と苦悩を描いている。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-8-3 11:19:55 (56 ヒット)

満州時代の上海が舞台の日本版「狼男」ファンタジー。
主人公の敵となる現地の悪者どもとの活劇が大半を占める。それが、あまりに漫画チックで、ちょっと残念。遥か昔にさかのぼる、昼間の大君と月夜の狼のなれそめ物語自体は悪くないのだが。さっと読めるので、体調を崩しりして、病院のベッドで読むには向いているだろう。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-8-3 11:18:37 (66 ヒット)

ウンベルト・エーコの「バウドリーノ」つながりから手に取った。
「ローマ人の物語」でもそうだったが、作者はまるで見てきたように歴史を語っていく。歴史探求と好奇心の追及はたいしたものだ。これまで抱いていた「十字軍」への認識を大幅に書き換えてくれた。学校では「十字軍遠征」についてはほんの二、三行で終わってしまい、歴史年表でそれを確認するくらい。大人になってから、こういった書籍で勉強するのもよいものだと思った。学生時代、私はいったい何をやっていたのだろう。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-7-14 9:24:28 (58 ヒット)

著者はスコットランド出身。グラスゴーで過ごした貧困の少年時代をモチーフとして物語を膨らませ作品に仕上げたという。
完成までに30年を要し、出版に際しては30社以上から断わられたという。それが英語圏で100万部突破の話題作となったというから、出版を拒否した出版社はどんな基準でこの作品を捉えていたのか、そこが一番興味ある点。
邦訳の良さもあるのだろうが、主人公を取り巻く社会的背景と、登場人物の内面描写はすなおに読み手に伝わってくる。哀しくて、重い内容だが、どん底に生きる主人公らの矜持が随所に描かれていて、テーマとは裏腹の心地よい読後感をともなって、本作品への好印象につながった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-7-14 9:23:29 (71 ヒット)

ウンベルト・エーコ、二作品目。前回手にした「薔薇の名前」よりかははるかに読みやすい。十字軍の史実半分、ファンタジー半分、そしてちょっとしたミステリーの味付け。「薔薇の名前」同様、キリスト教とその文化史が素地にあるとさらにおもしろく読めたと思う。これを機に十字軍の物語を紐解いてみようという気にさせられた。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-6-19 15:26:49 (57 ヒット)

極上の娯楽作品に出会うことも本読みの醍醐味、この作品にはそんな言葉が当てはまる。冒頭、漫画風の乗りでぐいぐいと引き込まれていく。次第に風刺のきいたテーマが入り込んできて、一時の浅田次郎を彷彿させる物語展開。「悪もん対いいもん」の単純な構造かと思いきや、複雑なスパイ戦と情報戦を呈してくる。天使役の「マリア」も登場するが、浅田次郎プラスアルファとしてはやや類型的な展開となったのはちょっと残念。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-6-19 15:26:12 (81 ヒット)

著者の作品六作目にして、ようやくアイスランドの地名、人の名前、捜査官である主人公のバックグラウンドに違和感なく溶け込めるようになってきた。それも理由の一つなのか、物語にすーっと入っていける。これまでの作品を通して主人公を含めたアイスランドの社会背景はおぼろげな印象であったが、それでもサスペンスとして読むには十分な作品であった。ここにきて、バックグランドが自分の中で明瞭になってくると、より作品群への親しみも増してきた感がある。アイスランドという未知な世界の物語だが、自分の中のアイスランド像を膨らませてくれた一連の作品となった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-6-6 15:44:12 (68 ヒット)

明治維新の動乱を勝海舟の視点から描いた作品。
小説的な内容を期待して手に取ったが、どうも当てが外れたようだ。文献からの引用、訳が多く使われており、論文的な意味合いが強い。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-6-6 15:43:11 (73 ヒット)

日本史の中では、いわゆる戦国時代が群雄割拠した三国志的な印象があった。しかし、江戸時代末期から明治維新にかけては、それに優るとも劣らない三国志があったといっても過言ではない。まず、テンポが格段に速い。今日明日の動き、決断が未来の日本を決める。その時間軸上にそれぞれの藩と勇士が落としどころを求めて蠢いている。そしてそれは怒涛の勢いとなって見事に新時代の幕開けへと収斂されていく。しかも、戦国時代には無かったものすごい外圧がかかっている。もはや死に体となっていた幕府だが、それに対して着実に手を打っており、これもまた新時代への一つの流れとなっていった。
本書はその中でも、主に鍋島藩の動きに軸を置いて描かれている。また、作者が歴史学者ではなく、かつて日本登山界の重鎮であり、あの山学同志会を率いていた第一級の登山家であることにも興味がもたれる。幕末から明治維新の概要について知るにはうってつけの書だと思う。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-4-26 18:47:18 (69 ヒット)

こんな事実は初めて知った。長州藩が下関を通る外国船を砲台でぶっ放していたこと、そしてその反撃に連合艦隊(フランス、イギリス、アメリカ、オランダ)が結成され、長州藩と一戦を交えたこと。連合艦隊と戦うための武力を長州藩が備えていたことの驚き。時代は待ってくれないというが、時代を見越した長州藩の先駆的行動は恐れを知らぬというか、いやはや大したもんだ。これがまた倒幕、維新への礎となっていくのだから、激動の時代というのはただ一つの事象が引き金になるのではなく、様々なものが必然的有機的に働いてうごめいていたことの証左であろう。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-4-26 18:46:08 (69 ヒット)

学校の授業ではただ五、六行で終わっていたように思うし、またそれだけの知識しかなかった。だが、こうしてそれだけをクローズアップしてみると、江戸幕府末期の「もがき」の一面であった感が募った。主として張本人である井伊直弼とその腹心長野主善の視点から語られている。脇役も多数登場するが、次はその脇役を主人公として描かれた本を読んでみたい。歴史にはいろんな角度から読み解く面白さがある。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-4-26 18:45:37 (60 ヒット)

幕末から維新にかけてのトリビアを会津藩中心に描いた本。敷居も高くなく、激動の幕末をさらっと見渡すことができる。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-4-26 17:52:41 (77 ヒット)

かなりの長編。半分程まで読み進めて、返却期限が来たので一旦図書館に返却した、その再読。今回は一気に読み込んだ。ソ連崩壊前後の青春群像。ネット上では評価が高いものばかりだが、私にはどうにもなじめなかった。物語としては中盤あたりで一つの幕が降りている。それだけならまだ★三つだったかもしれないが、後半に入ると、前半の物語をカバーするというか隙間を埋める挿話が散りばめられていて、それが、時系列でもなく、かつ場当たり的散漫的に描かれているものだから、頭の中で整理することに気がいってしまい、物語全体を追って楽しむことが出来なかった。それにもう一つ、これが当時としてはごく普通の青春群像だったのか、それもひっかかった。もしそうだとしたら、ソ連時代、人々はとても人道的とは言えない生活を強いられていたことになる。はたして実態はどうだったのか、気になるところではある。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-3-29 18:36:46 (92 ヒット)

朝刊に連載されていたということなのだが、はたして評判はどうだったんだろう。ネット上では高評価のものが多いが、私はそうは思わない。「芥川賞作家」中村文則はどこにいってしまったんだろう。何がこうも見苦しい内容の作品を彼に書かせているのだろう。そう思わずにはいられない。高評価を与えている人たちの気持ちもわからない。私の方が異端なのだろうか。
ただ、見どころがないわけではない。それはポーカー賭博の場面。はらはらドキドキする心理戦を見事に描き出している。この路線でずーっと通していたなら、もっとましな作品になっていたと思う。新聞連載という枠がそれを許さなかったのだろうか。次回作に期待。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-3-29 18:36:09 (93 ヒット)

副題に「会津藩士・秋月悌次郎」とある。
以前からちょっと気になっていた「会津」。確固たるイメージがあるわけでなく、自分の中ではもやもやとしたものがいつもくすぶっている、そんな「会津」を知るうえでの端緒になればと思って手に取った一冊。

幕末から明治への移行期を主題とした小説はそれこそ山ほどあるが、この作品は一人の会津藩士の視点からそれを捉えている。秋月悌次郎は昌平坂学問所に進み、当時日本一の文士と言われたほどの逸材。そんな彼が会津藩主松平容保の信を得て維新期の会津藩の下支えとなり、戊辰戦争、会津戦争を乗り切っていく。読んでいて、まるで講談を聴いているかのような心地よさに浸る。まさに秋月悌次郎こそが維新の立役者だ。悌次郎無くして維新は語れない。そんな作品に仕上がった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-3-29 18:35:27 (90 ヒット)

短編集。文字通り女性がウソをつく場面をいくつか載せている。
短編集としてはよく纏まっている方だと思うが、「ウソ」が最初からわかってしまっているというのは推理小説好きの私には、いまいちという感がぬぐい切れなかった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-3-29 18:34:52 (77 ヒット)

実在したポーランドで生まれイスラエルに移り住んだユダヤ人のカトリック神父をモデルとした作品。イスラエルにはユダヤ教、ロシア正教、キリスト教、イスラム教が混在しているらしい。「イスラエルのユダヤ人カトリック神父」にはいささかビックリ。イスラエルはユダヤ人の国で、当然彼らの生活基盤はユダヤ教にあるとばかり思っていたからだ。中東、東欧には世紀が始まる以前から現在に至るまで流浪の生活を強いられてきた人々は少なくない。そんな人たちの一面を切り取り、宗教や人種、国家を超えた普遍のものを、うまく表現できないのがもどかしい、主人公とその関わりのある人々との交流を通して描こうとしている。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-3-29 18:34:04 (69 ヒット)

一月に入ってから、同じ著者の「緑の天幕」を読んでいたが、図書館の返却期限内で読み切れなくて、一旦返すことにした。おもしろいのか、どうなんだか、よくわからない本だった。長編ではよくあるパターン、じっくり読んで味がでてくる、そんな気がして、もう一度読み直すことにした。この際、作者の作品をいくつか読んでみようと思って、手に取ったのがこの作品。
フランスで最も権威のある文学賞の一つである「メディシス賞」をとったとのことだが、自分的にはなんともピンとこない小説であった。ソ連時代の世相は、女性の視点からの、なんとなく伝わってくる。しかし、主人公の女性の数奇な一生を描いたわりには、抑揚が無いというか、淡々と描かれ過ぎていて、物語としての醍醐味に欠ける。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-1-17 11:31:56 (99 ヒット)

「三体」三部作の最終章。
前二作よりもSF度がかなりアップしていて、ついていくのに一苦労。はてな?という場面もしばしば。そこはサクッと読み飛ばして、本筋のみを追っていく。物語は、「スリー・ボディ・プログラム」を片一方に置きながら、宇宙の真理に迫りつつ、人類存続への道程が綴られている。
全体的には、時間軸、空間軸とも前2作品を遥かにしのぐ壮大なスケールで描かれる抒情詩。そこで描かれるアイデア手法には度肝を抜かれるという言葉がぴったし。いずれにせよ、全世界を席巻した中国発SFをようやく読み終えて、自分的にはほっとしたというか、肩の荷がおりたという感じ。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-1-17 11:31:20 (88 ヒット)

懸賞金稼ぎの探偵コルター・ショウの第二弾、今回の主題はカルト。
題名から「山の本」と思って手に取ってみたが、実際はそうでもなくて、ちょっとがっかり。いくら山ブームとはいえ、日本語タイトルの付け方にはもう少し配慮して欲しい。
軽めの仕掛けがポツポツ出てくるのは、初めてジェフリー・ディーヴァーの作品を手にする人へのサービスなのかもしれないが、どうだろう?と思う場面もある。ただ、前作品でちょっとだけ触れられていたショウの本当の敵に関する伏線も散りばめられていて、次回以降の成り行きが気になるところ。これでは、どうしても次の作品を読まねばならないだろう。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-12-18 11:16:47 (84 ヒット)

30年ほど前になる。いわゆる「満州帰り」という方の話をいくどか聞いたことがあった。その内容はおしなべて、「とても良い暮らしだった」「お手伝いさんもいて、贅沢三昧、よい時代だった」「ところが、戦争に負けた途端にお手伝いさんを含め満州人の様子が手のひらを反すようにがらりと変わった」「命かながら、引き上げ船に乗って帰国した」「裸一貫から、がむしゃらに働いて人並みの暮らしができるようになった。それは大変だった」、というもの。
以来、満州では日本人はみな良い暮らしをしていて、終戦を境にその生活が激変した、という漠然とした印象が私の中にはあった。

しかし、本作品を通して、その曖昧な私の概念はがらがらと崩れ落ちた。実際は、そんな良い暮らしばかりだったわけではなかった、開拓団として入植してきた人々然り。もともと満州に対する歴史的認識に乏しかったので(ほぼゼロに近い)、ここで語られることはまるで歴史の講義を受けているかのような感があった。

満州という国は単に満州一国で完結する話ではなく、ドイツ、ソ連、イギリス、フランス、イタリア、そしてアメリカ、もちろん日本も含めて、当時の各国の時代背景と密接に結びついている。本書はそういう満州国の歩みを小説という形で知らしめてくれている。

学校で習うのは、史実上の点だ。こういうことがあたった、満州事変とは、盧溝橋事件とは、蒋介石がどうした、ナチスドイツは、ムッソリーニは、ポツダム宣言とは・・・。作者もあとがきで記しているが、歴史は点と点が線になり、それが面へと発展し、しまいには空間となる(戦争の形態を模して)。いわば、いくつもの事象が有機的に結びついて歴史を形成していく。それは当然今にも通ずることなのではあるが、満州はそれがとても密に、凝縮された時代だったといえるのではないか。そして、悲惨な末路に至った我が国の大戦への認識もまた新たなものとなった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-9-7 17:39:21 (105 ヒット)

家の中のいらないものを処分していたら、懐かしい西村寿行の本が出てきた。読んでいて文句なく楽しいのが彼の小説。犬もよく登場し、その活かし方もおもしろい。本作品はほとんどおちゃらけ話で、漫画で読んでいる気分にさせてくれる。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-9-7 17:32:51 (95 ヒット)

ジョン・アーリックマン三部作の中では一番面白い。といっても、その差わずかしかないけれど。ウルグアイで出来したクーデター問題の責任を一身に負わされる羽目になった大統領補佐官が自身の無実を訴えどこまで自分の意志を通せるのか、そしてホワイトハウスがいかにしてその問題を乗り切ろうとするのか、両者の駆け引き、というよりは対決、が見もの。大体は読み手の想定内で物語は進んでいくが、最後の最後になって大統領の発する声明がすべてを収拾し、締めくくることになる、という結末意をに意を突かれた格好。それが星一つ増やすことにつながった。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-9-7 17:31:06 (124 ヒット)

CIA長官と大統領がお互いの失点を相手になすりつけようとするキツネとタヌキの化かしあいを描いたドタバタ政治小説。ニクソンを彷彿させる大統領のおバカぶりには容赦がない。私が以前から抱いていたニクソン像がそこに描かれている。こうまで、貶められたニクソンとは本当はどんな人物だったのだろうか。そんなにお間抜けな人物が大領領になれるわけがない。ニクソンという人間がどういうふうにして形成されていって、彼を囲む人々そして国民が彼をどう捉えていたのか、とても興味がわいてきた。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-8-18 14:50:58 (123 ヒット)

出だしはやや読みづらい。劇中のセリフのようでもあり、詩の朗読のようでもある。読み進むにつれてこれらが霊魂たちの会話であることが分かってくる。どうやら、南北戦争中に11歳で亡くなったリンカーンの三男のウイリーの霊を成仏させたいと、墓場に集まって来てガヤガヤやっている、らしい。その会話から南北戦争の様子が垣間見られ、リンカーンの人なりもやんわりと描き出されている。

ウイリーはとても聡明で頭もよく気質も穏やかで、リンカーン夫妻はとてもウイリーのことを愛していたらしい。それだけに、リンカーンの落胆ぶりも激しい。集まってきた霊魂たちは、ウイリーの霊をリンカーンの内に入り込ませ、リンカーンに最後の別れを決意させようとする。なにしろ南北戦争はまだ続いており、リンカーンは悲しみに浸ってばかりはいられないのだ。霊魂たちの視点から見た南北戦争とリンカーン、そしてリンカーン坊やの死、というのが本作品の主題である。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-8-18 14:49:51 (115 ヒット)

1971年、突然のピンポン外交から始まったように見えた、米中の急接近。そして、翌年の米中の国交回復。世間的にはキッシンジャーの表裏にわたるネゴがあったとされるが、本作品は、米中の橋渡しになったもう一人の立役者を設定し、舞台の裏側をスリリングに描き出している。
文化大革命に表される国内の無法化とソ連の脅威にさらされている中国、方やアメリカは泥沼化したベトナム戦争からの撤退に腐心し、ソ連への優位性の確保が焦点となっていた。主人公は、米中双方の利益と国際情勢を鑑み、周恩来とニクソンを相手に巧みに動き回る。秘密裏に米中を行ったり来たりする主人公の波乱万丈の冒険譚を主軸に置きながら、恋多き主人公の心の動きもうまく絡ませている。


投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-8-6 11:31:09 (109 ヒット)

とても愉快な軽サスペンス。
人気ミステリー作家の主人公は別名「ジャック・オブ・スペード」でもミステリーを発表している。主人公としてはその別名で描く方が裏側の自分、本性を具現化しやすく筆がすいすいと進む。表社会ではお堅い作家さんを演じ、社会貢献にも身を投じて好印象で認知されている。一方、ジャック・オブ・スペードでは正体不明のミステリー作家として邪悪な作品を世に出している。その裏作品がある女性によって盗作呼ばわりされたことから、表の自分も裏の自分もガラガラと音をたてて崩れていく。その崩れ方のなんとも滑稽で、ドツボにはまっていく様子が面白い。最後にもうひとひねりあるのかなと思ったが、すんんなりとした結末だったので、ちょっと残念。


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